我慢(紙ストロー)の限界?

Feb 17, 2025

トランプ氏の大統領令によりプラスチック製のストローが復活しました!

コメント要約

  • ロシアとの和平交渉を策定しようとしているとの報道には期待が持てるものの、ウクライナと欧州の同盟国にとっては好ましくない和平協定となる危険性を孕んでいます。
  • エマージング市場では、東欧がロシア・ウクライナ関連の前向きな見方による恩恵を受けやすいと考えています。
  • トランプ陣営は変化のスピードとその範囲に喜びを感じているかもしれません。このような米国の状況は、英国などの国との比較で見ると、極めて対照的です。
  • ドイツ総選挙が目前に迫っているものの、ドイツの政治情勢は、米国で起きていることの雲に隠れてしまっているように感じます。
  • 日本国債の利回りは、先週1週間を通して高値を更新し続けました。しかし、投資家のリスク回避姿勢が後退したことで、円は先週の上昇分の一部を失う格好となりました。

先週は、米国のインフレ率が予想を上回ったことで、週の半ばに利回りが上昇しました。しかし、ここ最近の経済指標は、米新政権からの耳障りなノイズや、新たな政策発表の影に隠れてしまっているような感覚があります。

トランプ米大統領がプーチン氏と面談し、ロシアとの和平交渉を策定しようとしているとの報道には、期待と懸念の両方が混在する結果となりました。明らかに、紛争を終わらせることは最も望ましい展開です。しかし、プーチン氏の要求の多くに同意することで、ウクライナと欧州の同盟国にとっては好ましくない和平協定となる危険性を孕んでいます。

さらに、同盟国を議論の場に含めないまま、ウクライナの将来の安全保障と復興のための負担をEUに強いることは、すでに破綻しつつある米国とEU加盟国との関係をさらに分断させるリスクがあります。

国際社会や米国内の著名人の多くからの抗議にも拘わらず、トランプ大統領が「プロジェクト2025」の達成を目指す中で、米有権者から強い支持を得ていることは驚くべきことです。金融市場も落ち着いた状態を維持していることから、米政権は、この先数年間に亘って、関税を引き上げ、政府効率化省(DOGE)における取り組みを倍増させることで連邦政府内の官僚主義を改革し、政府の機構を再編することに強い自信を感じている可能性があります。

多くの点で、トランプ陣営は変化のスピードとその範囲に喜びを感じているかもしれません。実際に、このような米国の状況は、新たな労働党政権が権力を握ってから9か月間、多くを語りながら、ほとんど成果を上げていないように見える英国との比較で見ると、極めて対照的です。この点に関しては、トランプ大統領に対する最も厳しい批評家でさえ、同氏が物事を成し遂げている大統領であることを認めざるを得ないでしょう。

とは言いながらも、これまでの措置が不法移民の流入を食い止め、汚職や偏向を排除し、雇用や投資を米国に戻すことに役立っているという短期的なポピュリスト的満足感を持っている人たちにとって、これらの取り組みの真のコストは未だ感じられていないように思えます。貿易関税については、何が課税の対象となり、どのような報復措置が採られるかという点を巡る最終的な結果における不確実性を考慮すると、この先1年の米国の成長やインフレに対する影響を正確に予測することは困難です。

しかし、これらの政策が掲げられていなかった場合と比較して、今年の米国のGDP成長率は少なくとも0.5%押し下げられ、インフレ率は0.5%押し上げられるとの見方を持つことは賢明であると考えています。実際には、これらの数字むしろ、保守的な予想値に終わるかもしれません。

大げさに言えば、そのような成長やインフレへの影響は、リスク資産市場の妨げとなり、社債スプレッドや株価への重石となる可能性があるでしょう。しかし現段階では、そのような兆候は見られていません。これは、データが公開されたときに初めて、市場がそれに反応することが出来るという事実に一部依拠しているのかもしれません。

貿易政策に関する不確実性の水準を踏まえれば、実施前にその政策決定を取り込んだ分析はどのようなものであれ、難しいと言えるでしょう。とは言え、このような状況は、現状の市場の価格形成には、ある一定の慢心が存在するのではないかとの見方の背景となっています。

欧州では、わずか1週間余り先に迫ったドイツ総選挙へのカウントダウンが始まっています。しかし、ドイツの政治情勢は、大西洋の反対側の米国で起きていることの雲に隠れてしまっているように感じます。トランプ大統領が「偉大で美しい和平合意(Big, Beautiful, Peace Deal)」を宣言出来るまでには、まだ長い道のりがあることは事実でしょう。トランプ氏は、もしそれが達成されれば、最初の任期で成し遂げられなかったノーベル平和賞の受賞は間違いないと考えていることでしょう。

しかし、ハマスが事前に合意した期限内にイスラエルの人質を解放できなければ、「地獄を解き放つ」と約束した同氏の発言を踏まえ、米国外の多くの人々はトランプ氏の和平実現における信頼性を極めて懐疑的に見続けています。実際、POTUS(アメリカ合衆国大統領:President of the United States of Americaの略称)が数十億米ドルに値するウクライナのレアアースの巨額取引に注目していることを示唆する発言もあり、US Inc.(米国株式会社)の自称CEOとしてのトランプ氏は、紛争に巻き込まれた民衆の幸福という名の下に、自身の利益と同じくらい経済的な成果にも注目しているのではないかとの見方が広がっています。

英国では、英予算責任局(OBR)の経済成長率の見通しが下方修正されたことが、英国の予算動向に負の影響を与えています。2024年後半にはGDPが停滞し、2025年も同様に低迷すると見られていることから、リーブス財務相が活用したいと考えていた財政余地はなくなり、今後数カ月間で、政府はさらなる増税や歳出削減に踏み切ることを余儀なくされる可能性があります。

一方、インフレ関連の指標は、成長率が低迷しているにもかかわらず、それほど改善していないように見受けられます。スタグフレーション・リスクが高まり始めていることは懸念で、政府は成長を追い求めようとしているにも拘わらず、アイデアに苦戦している政策当局者によって発せられるのは、陳腐な決まり文句や空虚な言葉のみになっているように思います。

政治的に言えば、最近の英国の世論調査で英国改革党(リフォームUK)が先頭に立っている点も興味深く見守っています。5月の地方自治体選挙では、足元のポピュリスト的なトレンドが(改革党を率いる)ファラージ氏らの支持に色濃く現れそうです。

日本国債の利回りは、先週1週間を通して高値を更新し続けました。しかし、投資家のリスク回避姿勢が後退したことで、円は先週の上昇分の一部を失う格好となりました。

より広範な為替市場に目を向けると、ユーロはウクライナでの和平合意期待による恩恵を受けて上昇しましたが、この先米国からEUに対する25%の関税率の発表があれば、ユーロが即座に反落する可能性があるとみて、足元の上昇基調に対しては慎重な見方をしています。

ただし、エマージング市場(EM)では、東欧がロシア・ウクライナ関連の前向きな見方による恩恵を受けやすいと考えています。また、この地域は、米政権の世界銀行や国際通貨基金(IMF)からの脱却に向けた動きがあれば、EM市場内における自国防衛的な流れによる恩恵も受ける可能性があると考えてきました。

これは我々が明示的に予測しているものではありませんが、現時点での米政権の現実を踏まえれば、超国家的組織に対する米国の支援は、もはや当たり前のものではないと言えるでしょう。

社債市場は先週も概ね静かな動きを続け、年初に見られた巨額の新規発行にも落ち着きが見られました。新規発行に見られたトレンドとして、引き受けを担う金融機関が新規発行に際して人為的に安い発行条件を最初に提示し、その結果、過度に膨張した、購入希望が超過した状態になることで、最終的に大幅にタイトな水準に価格が見直しをされて発行が行われるということがあります。

発注が仮に取り下げられたとしても、これらの不要な注文も正式な購入希望額では報告され、非常に強い需要があったことを印象づける材料となります。このような慣習には疑問符が付くものの、現実的な教訓として、このような需要データに関してはやや懐疑的に見る必要があり、また、新規発行そのものが、過去にそうであったような形で投資家にタダ飯(フリーランチ)を提供することはほとんどないということを認識しておくことが重要でしょう。

今後の見通し

この先を見据えたとき、トランプ氏主導の不確実性の雲がいつ晴れるのかどうかを見極めることがやや困難になっています。しかし、辛抱強く待つことは出来ると考えています。足元の投資環境下における最大のリスクは、取引動向に巻き込まれ、ヘッドラインを追うことであり、それこそがリターンを失ってしまう確実なレシピであるように思えます。

むしろ私たちは、魅力的な機会が出現した場合に、ポジションを売買したい価格水準を見極めたいと考えています。この点に関して言えば、米2年国債利回りがそれぞれ4.50%と4.00%の水準に達すれば、ロング及びショート・ポジションの構築を検討する好機になると考えています。同様に、ユーロ金利に関しても、ドイツ10年国債利回りが2.60%に上昇した場合には、魅力的な投資機会になり得ると考えています。

それ以外では、引き続きトランプ米大統領や米国の政策方針の影響を受けづらい取引に注力していく方針です。とは言いながらも、米国の政策変更が米国のみならず世界経済にとって極めて重要な意味を持つ現時点でのマクロ経済を踏まえれば、これは「言うは易く行うは難し」です。

過去の行動規範が改めて試されており、この先数週間で物事がどのように進展するかは非常に興味深いと言えるでしょう。例えば、イーロン・マスク氏と彼のチームは官僚主義に深く切り込み、結果として赤字を減らすことが出来るのか、もしくは官僚組織や裁判所はこれに反旗を翻すのか、などは注目に値します。

コメンテーターたちはこれまで、DOGEがもたらし得る変革の度合いについて懐疑的な見方をしてきましたが、我々はこれまでに見たことのないものを目の当たりにしているという感覚が日増しに強まっています。少なくとも、マクドナルドに関して言えば、プラスチック製ストローの復活が与える損失ははるかに小さいように思われます。

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