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コメント要約
先週は、米国がロシアとのウクライナ和平交渉を推し進める中、欧州がその対応に奔走する一週間となりました。概して言えば、会談が開催されるとき、EUの代表者が同席も許されていないという点は、EUが軍事的には重要でないことを物語っていると言えるでしょう。
前週のバンス米副大統領による扇動的なスピーチを受け、欧州首脳陣は既に米政権の態度に不満を持っていたこともあり、かつて当たり前に想定されてきた世界秩序が変化し、欧州は何らかの緊急性をもって対応する必要があることが急速に認識され始めています。
これにより、地域全体の防衛支出を大幅に増やしたいとの声が高まり、国家予算や既存の財政規則の枠を超え、EUレベルで財源が充当されることに関する合意につながりそうです。
しかし、支出を増やす合意に達することは、問題のほんの一部に過ぎません。現実的に言えば、EUにおける防衛産業のキャパシティは極めて限られており、米国からの継続的な支援なしに、独立して域内を防衛することが可能な体制を整える計画は、数か月ではなく数年単位での時間が掛かるとみられます。
また短期的に、EUは米国の兵器に資金を投入するとともに、自らの防衛セクターを構築しなければなりません。
少なくとも、この分野についてESG関連の反対意見は、払拭されつつあるように思われます。おそらく、投資家や利害関係者は、自分自身の安全保障を確保することが出来なければ、そもそも持続可能な投資などないということが明確となってきたのでしょう。
多くの側面から、このような防衛支出引き上げに対する動きは、既にここ数か月間で議論されてきたことであったため、実際には市場にとってそれほどのサプライズではありませんでした。しかし、コメンテーターが新たなニュースに相変わらず反応を示していることを踏まえれば、米政権における新たな現実がもたらす影響は、ようやく身を持って実感され始めたところのようです。
経済的な観点で言えば、防衛支出の増加は政府債務水準の上昇を示唆し、これが今後数四半期に亘って国債利回りの上昇を促す要因となるでしょう。実際、この一週間のこうした懸念を背景に、欧州債券利回りは足元でアンダーパフォームしています。
しかし、この先一年を見据えれば、防衛費の増大による財政面での経済成長の押し上げ効果に関しては懐疑的にみています。とりわけ、EUが必要な武器の輸入を余儀なくされた場合には、尚更です。
このような点を踏まえれば、欧州の成長について、より建設的な見方をすることは困難であり、今後半年間、欧州中央銀行(ECB)は政策金利が2%に到達するまで利下げを継続するとみています。
また、米国の関税引き上げが成長見通しをさらに押し下げることになれば、さらなる緩和が必要となる可能性があるでしょう。
このような見方に基づけば、利回りを上昇と低下の双方に促す相反するドライバーがあることから、欧州の債券利回りについては現時点で特段強い見方を保有していません。とは言いながらも、ドイツ10年国債利回りは2.7%前後で割安感が出始めるとみています。
一方、英国では、財政余地が不足していることから、労働党政権が嫌な役目を引き受ける立場に置かれています。
英国の防衛予算は他の複数のEU諸国を上回っているものの、英陸軍が戦略目標に対して相応に兵力不足となっていることから、さらに防衛費を増額させる必要があります。
しかし、税金を増やしたり、社会保障を削減したりする必要がある政策は政治的に不人気で、党内からの反発も踏まえれば、リーブス財務相やスターマー首相の立場を危機に晒す可能性があります。
この冬に他の給付を受けていなかった年金受給者への冬季燃料給付の廃止を巡る騒動は、国からの資金援助にますます依存するようになった英国社会において、いかに支出削減が困難であるかを浮き彫りにしました。
現時点において、英国はすでに予算に関する英予算責任局(OBR)の規則に違反するリスクに直面していると見ていますが、このOBRの評価自体も、急速な生産性の伸びを前提とした極めて楽観的な予測に強く依存しています。
その結果、政府が策を講じる余地はほとんどなく、よりバラ色な絵を描くために計算を工夫する幅も狭まっています。
この間、賃金の伸びやインフレ率は上昇しており、英国にとってスタグフレーション・リスクはさほど遠くない場所にあると言えるでしょう。
成長は依然としてほぼ皆無で、先行きについて楽観的な見方をする要因も見えづらくなっています。このような点を踏まえ、英国債及び英ポンドに対しては弱気な見方を維持しています。
一方で、日本の上空はより晴れているように見受けられます。10-12月期の成長の伸びは、日銀に好感され、継続的な金融政策の正常化を促す素地となるでしょう。
引き続き、日銀は7月に政策金利を0.75%に引き上げるとみていますが、4-6月期の日銀会合はいずれもライブ・イベントとなり、利上げタイミングが早まる可能性もあるでしょう。
このような見方によって、日本国債利回りは上昇を続けており、その過程において、保有する長期国債のショート・ポジションを徐々に削減しています。
これまでに日本の債券市場で見てきた動きをよりわかりやすく示すとすれば、資産クラスとしての日本国債のトータル・リターンは、過去10年間で見てもマイナス圏に突入してきています。
とは言いながらも、10年国債利回りが1.50%を超えれば国内投資家からの支持が増えると思われ、現時点での日本でのより有力な投資機会は、国債のショート・ポジションよりもむしろ、円のロング・ポジションであるとみています。
この一週間は、珍しく米国市場の話題が脇に置かれたように感じられました。プレジデント・デーの祝日によって取引日は少なく、価格動向には落ち着きが見られました。
目先は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げも利上げもないと予想されることから、米2年債利回りは預金金利とほぼ同等の4.3%に近い水準に留まるとみています。
トランプ大統領就任前に上昇していた米ドルは足元で幾らか調整しており、株式市場でも価格変動を促す目新しい材料に乏しいことから、株価はここ数週間ほぼ横ばいで推移しています。
こうした状況は、社債市場にとっては概ね支持材料となっていますが、スプレッドがタイトな水準にあることによって、社債の大幅な上昇余地は限られています。
日本国債のショート・ポジションは、過去数週間に亘ってリターンにプラスに貢献しています。
ここ数日間は、米国債に対するドイツ国債のロング・ポジションがリターンの足かせとなっています。しかし、ソブリン・クレジットでは、ウクライナの和平への期待が高まったことによる恩恵を受け、ルーマニア国債のスプレッドが縮小しています。
さらに、防衛費の増額をEUの予算から共同で拠出するという決定は、ユーロ統合をより強める方向への前進であると捉える見方もあります。
その意味で、トランプ政権はEU加盟国をより緊密に結びつけるきっかけをもたらす可能性があり、そうなれば、域内のスプレッドに追い風になるとみています。
とは言え、週末のドイツ総選挙ではポピュリズムの台頭が予想されます。特に、隠れ「ドイツのための選択肢」(AfD)支持者が、この極右政党の得票率を20%超に押し上げるかどうかは興味深く見守っています。
私たちが不確実な時代に生きているということは、もはや陳腐な決まり文句のようになっています。しかし、地政学的なイベントはこれまで維持されてきた多くの常識を覆しており、それが結果的に、私たちを取り巻く世界だけでなく、金融市場にも大きな影響を及ぼす可能性があるように感じられます。
このような視点から、足元ではやや慎重なポジションを維持し、慢心と見られる動きがあるならば、それに従わない姿勢が賢明であると考えています。
特にウクライナ情勢に目を向けると、仮にウクライナ政府が自国の治安の保障を欠いた、悪い和平案とみなすのであれば、米露の合意が自動的にウクライナにおける戦争の終結を意味するとは限りません。その場合、戦争を続けることが理にかなっており、実際に戦争への取り組みを増強すると決定することもあり得るでしょう。
同様に、仮に和平合意によって敵対行為が停止することになったとしても、停戦が長続きする保証はないでしょう。
さらに、ウクライナでロシアが全面勝利を収めた場合、プーチン氏がそこで止めないのではないかとの懸念も高まっています。欧州への影響を考えれば恐ろしいことで、情報に精通した評論家であれば、ロシアの軍事力が今や欧州の他の国々を総合した軍事力をも上回っていることを見逃さないでしょう。
ウクライナからの難民の波が押し寄せるリスクは、確実に多くの国における移民への許容度が分岐点を超えることにつながるでしょう。結果として、欧州全体が、よりポピュリスト的で、国家主義的な右派の方向へと進むことになるかもしれません。
トランプ米大統領とバンス副大統領は、欧州を見て、内なる敵を挙げ、右に傾いているこのトレンドが、トランプ政権もワシントンDCで戦いを仕掛けている「意識高い系のウィルス(Woke Mind Virus)」に感染した大陸の治療にも役立つことを期待しているのかもしれません。
しかし、プーチン氏やその他の有力者に権力を与えることが正しい方法ではないことは明らかです。そして米国が、自国の利益は過去70年間に亘って既存の世界秩序によってもたらされてきたということを思い出してくれることを願ってやみません。
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