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コメント要約
先週の金融市場では、中国企業のDeepSeekから最新のAIモデルがリリースされたことが広範なハイテクセクターに衝撃をもたらす中、米国債利回りが低下しました。同社のAIモデルが、メタやオープンAIといった市場リーダーと比較しても遜色のないパフォーマンスを達成したことは、関係者に衝撃をもたらしました。
同時に、開発コストや研究費の水準を大幅に引き下げながら、これらのパフォーマンスを達成することが出来たとされます。米国が中国における最新チップの輸入規制を敷いていることを踏まえれば、DeepSeekのような競合社が、AIで既に確立された市場リーダーを追い越すためには障壁があると考えられます。
しかし、DeepSeekの進展はショックをもたらし、ハイテク業界の中には、宇宙開発における競争でかつてロシアがスプートニクを発表し、支配的地位に対する米国の慢心を揺るがした時になぞらえる発言も見られました。
米国のハイテク企業は、今後長い年月に亘る、AI技術への投資の活発化と結びついた積極的な成長予測を前提に、高水準の株価で取引されてきました。実際、ちょうど先週も、5,000億米ドルのスターリンク・プロジェクトが米国政府によって発表されました。また、この分野への参入障壁の高さに関する想定も、利益見通しの支えとなってきました。
しかし、AIの成果が、これまであまり知られていなかったプレーヤーによって、これまで想定されていたよりもはるかに安価に達成出来るとすれば、これらの投資における想定の一部を崩す可能性があります。
このことは、金融市場が時として自らの誇大広告を信じ過ぎ、バリュエーションが現実から大きく乖離してしまいかねないリスクに晒されがちな中において、ある一定の現実を市場に呼び戻すことになるかもしれません。ただし今のところ、ハイテク企業の収益は力強いモメンタムを示しています。
さらに、DeepSeekのニュースの別の解釈として、これが、米国企業がAIセクターにおいて新たな主導権の握るため、短期的により迅速な投資を促す意欲につながる可能性も考えられます。
実際、1960年代の米国のアポロ計画の例を見てみると、これは当初のロシアの成功から痛々しいパンチを受けたことに続いたという点で共通しています。いずれにせよ、テクノロジー、そしてとりわけAIにおける進展は、今後数年間に亘る世界経済にとって重要であり、短期的には市場の変動性の潜在的な要素になり得ると考えています。
先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)に特段のサプライズはなく、2024年後半の合計100bpsの利下げを経て、FOMCは今年前半は政策を据え置くと予想しています。とは言いながらも、米国株式市場がピーク時から15%以上調整すれば、米連邦準備制度理事会(FRB)がこの先の会合において利下げを続ける可能性が高まるとみています。
それ以外では、経済的な環境に多くの変化は見られません。したがって、預金金利とほぼ同水準の4.3%近辺にある米2年債利回りは、概ねフェアバリュー近辺にあるとみています。そのような見方に基づき、現時点では金利デュレーションに関してほぼフラットのポジションを維持していますが、経済に関して特段大きなニュースがない限り、短期債利回りが4.0%を付ければ、ショート・スタンスに戻ることを検討するかもしれません。
一方、米国では先週、米国が退去を目指している移民を強制送還するためのフライトの受け入れに関して、コロンビア側の協力を強制するため、いかに25%の関税の脅威が効果的に用いられたかを、興味深く見ていました。
これは、より広範なトランプ大統領のアジェンダを支援するために、どのように貿易政策が活用できるかを示しており、また、トランプ氏がどうしても達成したい結果をもたらすための交渉においては、法律ではなく大統領令がいかに最大の自由度をもたらすかを物語っていると言えるでしょう。ベッセン財務長官の発言によれば、より広範な世界各国に対する関税策は最終的に法制化される可能性があります。これにより、政府は減税による税収減の一部を補うために、関税収入を利用することが出来るようになります。
しかし、議会においては僅差で過半数となっていることを踏まえると、立法の過程には6カ月から9カ月以上の時間が掛かる可能性があり、さらにこれは今年後半に成立を目指す財政調整措置となる可能性がある法案の1つになるでしょう。短期的に米政権は、大統領令を活用した、国・セクターレベルでの的を絞った関税に注力すると予想しています。
その意味で、コロンビアの例はまた、米国の関税が極めて不公平な状況を作ることが出来ることを示しています。なぜなら、コロンビアは常に米国にアクセスする必要があるのに対し、米国はコロンビアに全く依存していないからです。ここで、食糧やエネルギー、安全保障において他国に依存することのない世界の超大国が、いかに二国間の貿易戦争に勝利し、優位に立つ力を持っているかが見て取れます。
この場合、米国が他国を不利益に晒して自国の立場を濫用するリスクがあると警鐘を鳴らす人もいるかもしれません。しかし、米国人の多くは、米国にとって有利な方向へのいかなるシフトであっても、これまで米国自身を犠牲にして他国に利益をもたらしてきた貿易関係に、秩序とバランスを回復させるに過ぎないと指摘し、この主張に反論することでしょう。これこそが『Make America Great Again』のメッセージの核心であり、関税が確実に実施されるであろう理由です。市場にとって問題は、それがどの国に対して、いつ発動されるかということです。
その点からすれば、米国との間で大幅な貿易黒字を維持している国に目を向けることが先決でしょう。米政権は、米国が不当に損を被っている例として、こうした二国間の不均衡を強調するかもしれません。ただし、多くのエコノミストが、これらの不均衡は他国と比較して米国の過剰消費の結果であると結論づけるであろうことは、念頭に置く必要がありそうです。
いずれにせよ、貿易不均衡が是正されるであろうと考えることは妥当でしょう。この視点に立てば、そのような黒字国(及びEUなどの地域)にとっては、高関税や消費額及び投資額の減少といった形ではなく、むしろ自国の消費水準を引き上げ、成長を押し上げることで、このような調整を実現した方が有益であると認識した方が良いと思われます。
関税以外の話題に目を向けると、ユーロ圏の経済指標は、24年10-12月期に同地域の成長が停滞したことを示し、3%近い成長にある米国とは対照的な状況となりました。このことは欧州債券利回りの下支えとなりましたが、先週の価格変動は米国債の動きにつられる傾向がありました。弱い成長を踏まえ、ECBが利下げを継続するとの見方に確信を持っていることから、足元では欧州の金利に対してやや前向きな見方を維持しています。
また、この先のドイツの総選挙にも注目しており、足元では極右「ドイツのための選択肢」(AfD)の支持率が上昇しています。実際、同党への忠誠を告白することに抵抗を感じる人がいるかもしれないことを踏まえれば、公表された支持率が実際よりも控えめに出ていたとしても不思議ではないとみています。
AfDが選挙後に連立政権に加わることはないにせよ、結成されるであろう連立政権は当初から弱体化したものになると予想しています。また特筆すべき点として、国全体が右派へのシフトを望んでいるように見える一方で、自由民主党(FDP)が必要とされる5%の得票率を下回ると見られることから、CDU(キリスト教民主同盟)は緑の党や社会主義政党と連立を組むことを余儀なくされるであろう点です。
つまり、ドイツにおいてそれほど大きな合意や進展は見込まれず、現状の低迷が続くであろうということです。一方で、ドイツやその他EU諸国において、よりナショナリスト的な、EU色を薄める動きが見て取れ、短期的には十分なきっかけに乏しいものの、この先EU諸国のスプレッドが試される局面が訪れる可能性もあるとみています。
先週は英国も海外市場の展開につられ、英国債利回りが低下しました。イングランド銀行(英中央銀行、BoE)は来週の会合で、ハト派姿勢を打ち出す可能性があるとみています。しかし、これまでにも述べた通り、英国においては引き続きインフレ圧力の証拠が見られています。
最終的には、利下げが英国金利のイールドカーブのスティープ化につながるかもしれませんが、仮にBOEが過度な緩和という政策ミスを犯せば、高インフレがより構造的に期待インフレに組み込まれるようになると考えています。
前週の日銀利上げは、先週1週間の円相場を支える要因となりました。しかし、日銀の利上げが、為替取引のストップロスや日本株の大きな下落につながった大幅な市場ボラティリティのきっかけになった昨年7月とは対照的に、今回の会合に対する市場の反応ははるかに穏やかなものでした。
植田総裁らは、今回の政策決定に先立って市場に適切にコミュニケーションをしていたことで、実際の行動が市場のサプライズに結びつかなかった、との自信を持っているかもしれません。日本の政策金利が依然として日銀の想定する中立金利を大きく下回っていることを踏まえ、日銀はこの先も追加利上げを続けるとみています。
人口動態の影響で労働供給が減少する中、日本の高齢化がこの先の賃金上昇につながると考えています。したがって、2025年の春闘における5%の賃上げは、今後も繰り返される可能性が高いとみています。
このように、日本の高齢化は、インフレをより構造的なものにしています。現在、日銀は、2000年から2006年に掛けて利上げを急ぎ過ぎたために、その後のデフレ状態への回帰を許してしまったことを振り返り、懸念しているようですが、日本経済の根底にあるダイナミズムは今や大きく異なっていると考えています。
その意味で、コア・インフレ率が3%を超えれば、極めて緩やかなペースでしか政策正常化していない日銀が、ビハインド・ザ・カーブとなって(後手に回って)いないかどうかに対して、より精査の目が厳しくなるかもしれません。引き続き、日銀は7月に政策金利を0.75%に引き上げ、2025年末もしくは2026年初めには1%に引き上げるとの見方を維持しています。
この先を見据え、先週の市場からの教訓があるとすれば、それは、時として未知のもの、未知のイベントが、市場に最大のインパクトを与えかねないということでしょう。実際、数週間前まで「DeepSeek」について多くを知っていた投資家はほとんどいなかったと見られ、新たなきっかけがどのように出現し、世界規模で市場に影響を与え得るかを示す好例であったと言えるでしょう。
ある意味では、中国・武漢に出現し、その後世界中を襲った新型コロナウイルスの脅威に世界は気が付き始めたばかりだったのが、ちょうど5年前であったというタイミングを皮肉に思ってしまいます。もちろん、中国の研究開発室からのこの最新の発表が、必ずしも私たちが心配しなければならないものであるという訳ではありませんが。
実際、もしAIがより安く、より幅広く活用できるようになれば、これは生産性向上に役立ち、インフレにも、経済成長にも良い結果をもたらすことになるでしょう。ただ、一旦立ち止まって株価の価格評価が過度に割高になっていないかどうかを精査することなく、トレンドを追いかけて一部の銘柄の株価上昇を追っていた投資家にとっては、必ずしも良いことではないかもしれません。
より広範に言えば、DeepSeek(及びその他の中国企業)がチャットGPTのような競合から技術を盗んだ(snake)との主張に思いを巡らせば、先週春節を迎えた中国では今年が巳年(Year of Snake)であるということを思い起こしました。
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