ぼろぼろであざだらけでも、より良い状態

Aug 19, 2024

市場は回復しており、8月初めの状況と比べるとより良い状態にはなっているようです。

コメント要約

  • 先週も、円キャリー取引の解消や雇用統計の弱含みを背景としたボラティリティの高まりからの回復基調が続きました。
  • 市場は混乱前と比べるとより良い状態にはなっているようです。
  • 米国のマクロ経済指標は経済のソフト・ランディングというテーマに概ね整合的な内容となっており、米連邦公開市場委員会(FOMC)が9月に25bpsの利下げを実施する方向性は明確であるとみています。
  • 欧州市場は比較的静かな動きとなっている一方、英国では、労働党新政権が待ち望んだ内容の経済指標が見られました。

先週のグローバル市場では、月初めに見られたボラティリティの高まりからの回復基調が続きました。月初めには、債券利回りの大幅な低下や株価の急落が見られ、VIX指数もコロナ危機以降の最高水準を付けていました。

価格動向の大半は、ヘッジファンドやCTAなどの投機筋によるポジション解消によるものと見られ、数週間前と比較してそれらのポジションはかなり軽くなったように見受けられます。

その一例が日本円のポジションで、人気のあったキャリー取引が大幅に巻き戻される中、円は急反発しました。結果として、投資家が取得しているリスク量という意味では、数週間前と比較して少なくなっていると言えるでしょう。

その意味で、市場はぼろぼろで、あざだらけの様相を呈していますが、混乱前と比べるとより良い状態にはなっているようです。

9月に入って社債の新規発行が増加するまでは、今後数週間ではリスク資産のさらなる回復が見込まれると考えています。

そんな中、マクロ経済指標は経済のソフト・ランディングというテーマに概ね整合的な内容となっています。

アトランタ連銀GDPナウで見た7-9月期の米経済成長率は2.9%と比較的堅調で、7月の小売売上高も底堅い消費活動を示しました。

労働市場の急減速に関連した懸念も、前月末にハリケーンの影響で増加していた新規失業保険申請件数が直近2週間で減少していることによって幾らか和らいでいます。

その他、先週発表された消費者物価指数(CPI)では基調的な物価圧力がさらに緩和していることが示されました。6月に前月比わずか0.1%増であったコア価格は、7月も同0.2%増に留まりました。

ただしインフレ率は依然として米連邦準備制度理事会(FRB)の目標である2%を上回っており、この先、物価は粘り強さを維持する可能性があるとの見方を変えていません。

過去数ヶ月間の指標には、中古車価格の低下などの一時的な要因が寄与していたことを踏まえれば、尚更です。

とは言いながらも、依然として注視すべき経済指標の発表は残されてはいるものの、米連邦公開市場委員会(FOMC)が9月に25bpsの利下げを実施する方向性は明確であるとみています。

金融市場はFRBの金融緩和を先行して織り込みがちであり、実際に足元では今年末までに100bps、来年の今の時期までにさらに100bps程度の利下げが織り込まれていますが、このような織り込みは過剰であるとの見方を維持しています。

仮に成長が大幅に減速した場合には、FRBが大幅な利下げを実施するとみられ、そのようなシナリオも、可能性としてはあるでしょう。

しかし短期的には、米国経済はモメンタムを維持することが出来、結果として政策金利はより穏やかな利下げ軌道を辿ると予想しています。

さらに、米財政政策も緩和的な状態が続くとみています。現状のFRBの予測は、これまでの減税策が延長されないことを前提としたベースケースの評価に基づいており、2025年には財政政策が引き締められることを想定していますが、その逆の展開になる可能性の方が高いと考えています。

米国の債券資産の価格評価を精査する上では、スワップ金利の水準に着目することも有益でしょう。その点で言えば、ここ数ヶ月間でスワップ金利は国債を大きくアウトパフォームしており、10年のスワップ金利は国債金利を40bps程度下回る、3.4%程度となっているほか、30年のスワップ金利も30年国債を80bps下回る、3.3%に留まっています。

これらは一際目を引く水準であるとともに、多くの側面から「奇妙(weird)」に見受けられても不思議ではありません。このようにスワップ・スプレッドがマイナスとなっている背景としては、構造的な国債の供給過多に加え、市場参加者の目から見た米国債の信用力悪化が示唆されている可能性もありそうです。

しかし、仮にこれが信用に関連した話のみであれば、米国のCDSスプレッドの水準にも現れて然りかと思われますが、同水準は落ち着いています。したがって、現時点でスワップ・スプレッドは過度な水準にあるとみており、その反転を見越したポジションに投資機会があるとみていますが、財政関連の話題に変化が見られない限りはまだ、ポジションを構築するには早すぎるとみています。

またここで同様に着目したい点として、長期のスワップ金利には、既にFOMCのドットチャートが示す利下げの終着点である2.75%までの利下げが完全に織り込まれているように見受けられる点です。

2010年代に見られた光景とは異なり、この先数年間はインフレ率が2%目標を上回って高止まりする可能性が高い中、そのような政策金利の水準は低すぎるとみています。

さらに、市場が既にそのようなインフレ及び政策金利の将来的な軌道を織り込んでいる中、仮にインフレ率が想定よりも粘り強く、利下げに時間が掛かった場合には市場が落胆する余地が大きく残っているとみています。

そのような点を踏まえれば、債券資産の価格評価は年限を問わずそれほど魅力的な水準とは言えず、金利デュレーションのショート・バイアスを維持しています。
欧州市場は比較的静かな動きとなっており、多くの人がビーチで夏を満喫していると見られる中、今後数週間でも特段目新しい材料は予想されません。

英国では、GDP成長が事前の市場予想の上限に近い水準となったほか、インフレ率も予想をやや下回るなど、労働党新政権が待ち望んだ内容の経済指標が見られました。ただし、英国のインフレ率は、過去数ヶ月間の指標を押し下げていたベース効果の影響が剥落することで、この先数ヶ月間は上昇に向かうと予想しています。

したがって、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)が年末までに追加利下げを実施出来るかどうかについては懐疑的にみています。ただし、先週の経済指標の内容自体は、今月初めの利下げが政策ミスであったと判断されるリスクを低減したと言えるでしょう。

その他の市場に目を向けると、ニュージーランドでは、ニュージーランド準備銀行(中央銀行)が今サイクルで初となる利下げを決定しました。同国経済が弱含んでいることを踏まえ、さらなる利下げが予想されています。

一方で、タスマン海の反対側に位置するオーストラリアの経済状況は相対的に極めて堅調であり、結果として豪ドルがNZドルをアウトパフォームしています。

その他の為替相場では、先週初めには一時1ユーロ=1.10米ドルを突破していましたが、米経済指標の底堅さを背景に米ドルがユーロに対して反発しました。

今後の見通し

全般的に言えば、先週は幾つか重要な経済指標の発表はあったものの、市場の動きは幾分静かでした。この先数週間は、経済指標という点でも材料に乏しくなることから、実際には夏休みが始まるとともに予想されていたような夏の閑散期のような市場となりそうです。

投資家の注目は、毎年8月末に開催されるジャクソンホールでの金融政策会合に移るでしょう。ただし現時点において、同会合で明確な政策ガイダンスが与えられる可能性は低いとみており、政策面では9月のFOMCが重要なイベントになるとみています。

政治面に関しては今後もボラティリティが予想され、その点で言えば、米大統領選に向けてハリス氏がその勢いを維持していることを興味深く見守っています。賭けサイトでは、既に同氏が11月の大統領選で勝利する確率が最も高いとされているようです。

しかし、ハリス氏にとって、今はまだある種のハネムーン期にあるようにも見受けられ、その魅力が今後数週間で薄れていく可能性もあるでしょう。

実際のところ、大統領を巡る争いは現時点でかなり僅差であり、予測は不可能に思えます。しかし足元では、トランプ氏がハリス氏への攻撃でもがいているようにも見受けられ、その発言も日増しにとりとめのないものとなり、苛立ちが露わになっています。

金融市場は、ぼろぼろで、あざだらけになりながらも、試練の数週間を経て状態はむしろ若返ったように良くなっていますが、同じことはトランプ氏には当てはまらないようです。

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