トランプ・スランプ!

Mar 17, 2025

関税と貿易:混乱は新たなレベルへ

コメント要約

  • 先週は、米株式市場の下落や経済への懸念が質への逃避を促したことから、米国債利回りは週初に低下しました。
  • トランプ氏による関税の脅威や政策発表は、貿易戦争への懸念を高め、投資家を神経質にさせています。
  • ドイツのメルツ次期政権が発表した財政のUターンによりユーロ圏のインフレ見通しと成長率の上方修正につながっています。
  • 先週は東京で政策立案者や投資家と面談しましたが、日本経済は良い状態にあるという見方を再認識する結果となり、国内投資家の資産配分が日本の債券へとシフトする可能性もあるとみています。
  • リスク資産にとって下方リスクが引き続き予想されるため、クレジット債やリスク資産全般に対して慎重な姿勢を維持します。

先週は、米株式市場の下落が質への逃避を促したことから、米国債利回りは週初に低下しました。前週の雇用統計をはじめとする経済指標は依然として比較的健全ではあるものの、関税や連邦政府の人員削減が経済活動にとってどのように重石となるのかという懸念が、将来の株価収益に対する懸念につながっています。

一方、「トランプ・プット」が株価指数の下落を阻止するであろうと想定していた投資家の慢心は、前週末のトランプ米大統領の発言によって、揺さぶられる展開となりました。同氏は、第一次政権時と比較して、成し遂げようとしている改革のアジェンダが実行されている限り、短期的な相場の弱含みにはそれほど敏感に反応しないことを示唆しました。

株式市場の下落は週後半には落ち着いたものの、債券市場における質への逃避の動きが週後半に掛けて反転したにもかかわらず、株価指数の反発は抑制されていたことは特筆すべきでしょう。

債券の観点からは、米連邦準備制度理事会(FRB)が目先利下げを検討するための材料には乏しいように思われ、先週発表された米消費者物価指数(CPI)は市場予想と比較して良好な内容ではあったものの、関税政策が実施されていく流れの中、今後数か月間はインフレのリスクが残ると考えられます。

米国経済にとって関税の賦課は、供給にマイナスのショックを与えるとの見方はこれまでも論じてきました。一般的に中央銀行は、その政策手段が経済の総需要を管理するのにいかに適していて、需要ショックにいかに対応できるかについて、声高に発言しています。しかし、新型コロナのパンデミックの時に経験したように、政策金利は供給ショックの文脈においては、それほど有用な道具ではありません。

金利先物市場では、2025年のうちに75bps程度の追加利下げを織り込んでいますが、これは過剰であると考えています。したがって、一週間ほど前に米国金利についてはショート・ポジションに移行しました。

米政策金利はFRBが試算する長期的な中立金利の水準を上回るところにありますが、現時点ではFRBが次の動きとして利上げを実施する可能性を排除することですら困難です。

特に、2021年にインフレ上昇を不適切にも見過ごした米連邦公開市場委員会(FOMC)は、同じような過ちを二度と繰り返したくはないでしょう。

したがって、FRBが利上げ圧力を感じる可能性のある痛みの閾値は、コアCPIでみて4.0%前後(コアPCEで見て3.5%)であると考えています。

一方、ホワイトハウスでは、先週一週間もトランプ政権からの政策方針に関する発言が絶えませんでした。カナダに対する関税を倍にし、向こう見ずにも米国の通商政策に対抗する国への報復関税を実施するという脅威は、貿易戦争の激化という結果を恐れる投資家を神経質にさせています。特にユーロ圏など、多くの国が米国に対する報復関税を課す流れは止まっておらず、それがホワイトハウスからの攻撃的な言い回しをさらに引き出す結果となっています。疑似的な消費税として10%の関税を法制化するというのが、最終的な落とし所として妥当だと米国で見なされるかもしれません。

しかし、トランプ氏の対立的で、時にいじめっ子のような姿勢によって短期的には緊張が高止まりし、その間、経済及び金融市場に大きな打撃がなければ、直ちに立て直すことが難しくなるほど、緊張関係が深刻化する恐れがあります。

こうした不透明さは明らかに短期的なセンチメントを左右する要因となり、マクロ経済や政策において企業が成長するために必要なのは安定性であって、不安定性ではないということを経済界は示す反応となるでしょう。

大西洋の反対側の欧州では、ドイツのメルツ氏が前週発表した財政のUターンの影響を市場参加者が消化する動きが続きました。投資家は、ドイツとユーロ圏のインフレ見通しの上方修正を続けており、2025年のGDP成長率に関しても、今回のドイツの発表前に予想していた水準の倍近い、1.5%前後で推移する可能性が高いと考えています。

同様に、インフレ見通しも引き上げ、これまで2%をやや下回る水準と予想していたCPIも、2.5%前後で推移することになるとみています。ECBも見通しを修正すると、現在の緩和サイクルにおける最後の利下げが既に実施された可能性があるとみています。またそのような見通しを踏まえれば、金利市場は依然として追加の金融緩和を過度に織り込んでいるとみています。

預金金利が2.5%に留まることになれば、足元で3.25%近辺にあるユーロ圏の10年国債利回りの平均は、スプレッドの点ではフェアバリューからそれほど遠くないように思えますが、ドイツ国債利回りは、この先の供給見通しが大きく上昇したことで、従来の希少性プレミアムの一部を失う中で、この先も上昇を続ける可能性があるでしょう。

先週は東京で政策立案者や投資家と面談しましたが、日本経済は良い状態にあるという見方を再認識する結果となりました。成長のモメンタムは2024年末に掛けて加速し、目先の春闘においても力強い結果を予想しています。結果として、インフレ及び継続的な金融政策の正常化が裏付けられるとみています。

とは言いながらも、日銀にとって7月よりも前に利上げを実施することはそれほど急務ではないように見受けられ、また過去数ヶ月間で日本国債利回りが大幅に上昇したことから、全般的な傾向として、新年度には海外債券から日本の債券へと国内投資家の資産配分がシフトする可能性もあるとみています。

これまで日本国内の投資家からは、金利や利回りに対する我々の過度に弱気な見方を疑問視されていたこともありましたが、今や、我々の見方が国内のコンセンサスに概ね近い内容となっていることは幾らか奇妙にも思えます。引き続き、日本の政策金利は2025年末には1.0%、2026年には1.5%まで上昇すると予想しており、10年債利回りに関しても同時期にそれぞれ1.75%と2.0%まで上昇すると予想しています。

ただし、そのような水準に達すれば、国債利回りのさらなる上昇は抑制されると考えています。これまで、利回りの上昇は、政策当局者から概ね好感されてきました。しかし、日本の政府債務が高水準にあることから、利回りが上昇し過ぎれば、債務の持続可能性に関する懸念につながるおそれがあるとみています。その場合、国内投資家が市場を支えるために介入するか、そうでなければ、政策当局がその対応を自ら行うことになるかもしれません。

一方で、日本国債のイールドカーブ上、30年債は10年債に対して相対的に割安であるとの見方を維持しています。ただしそれ以外の日本における最大の投資機会は、為替市場にあるとみています。足元では、投資家のリスク回避姿勢の高まりを背景に、円はここ最近の上昇分を失っています。しかし、この先金利差や成長格差が縮小していく中、円の上昇を促す要因は複数あるとみています。日米の政策当局者はともに、より強い円を望んでおり、日本の投資家がより国内の資産に目を向ける動きも円相場の支えとなり得ます。

一方で、円に関して長期的に最も弱気な見方をしている人の中には、人口が減少するにつれ、GDPが縮小することを指摘する人もいます。しかし、退職する人々が、老後の貯蓄を取り崩して海外資産を売却する動きを踏まえれば、それ程明確とは言えないと思います。さらに、日本のGDPの長期的な縮小という見方にも再考の余地があるでしょう。日本の生産性成長率は現在1%程度(ほとんどの欧州の国では0%)と見られています。

さらに、技術や企業改革への投資は、いずれも日本において生産性成長率がさらに高まる余地があることを示唆しています。また、日本では、西側諸国で衰退しつつある職業倫理が強固に維持され続けていることも印象的です。金曜日の予定が会議でびっしり埋まっていたり、全員が週5日、日常的にオフィスに出社しているような国は、日本の他にあったとしても稀でしょう。

社債市場では、3月に入り、ユーロ建て社債が米ドル建て社債をアウトパフォームする傾向が見られています。欧州では、先週半ばに幾らか弱含んだものの、月初来でスプレッドが横ばいとなっている一方、米国のスプレッドは拡大しています。需給面での追い風が継続していることが、関税関連の報道に対する懸念や、株式市場のリスクオフ・ムードを凌駕しています。

ICE BofAの代表的な指数によれば、先週金曜日時点のスプレッドは、ユーロ建て社債で90bpsを維持している一方、米ドル建ては94bpsまで再び拡大しています。このようにユーロ建てのスプレッドが米ドル建てスプレッドを下回るのは、2022年1-3月期のロシアによるウクライナ侵攻以来、初めてです。

今後の見通し

今後の見通しとして、数週間の混乱の後、ワシントンからの政策ノイズは収束に向かう可能性があるとみています。貿易政策については、市場の注目が4月初旬としている関税発動期限へと移るでしょう。

将来的に関税によって得られた収入が連邦予算の歳入として盛り込まれるためには立法化が必要であり、10%近辺に引き下げられた関税率で連邦議会を通すことを目指すとみています。

ただしこの過程には時間が掛かることから、その間、トランプ米大統領は引き続き大統領令を用いて同氏の関税アジェンダを推進するとともに、そのメカニズムを、国境警備や薬物取り締まりなどの他の政策目標達成にも活用するとみています。

マクロ経済や地政学的な再編は、経済と資産価格に対して短期と長期両方の意味合いを持つかもしれません。短期的には、リスク資産にとって下方リスクが予想されるため、クレジット債やリスク資産全般に対して慎重な姿勢を維持します。しかし、景気減速を過度に警戒する必要はないと考えており、今年米国が景気後退する可能性は低いとの見方を維持しています。

また、米政権のスタンスによって、相対的な勝者や敗者、意図せざる受益者や犠牲者が生まれる可能性があるとみています。例えばカナダについては、今後予定される選挙においてトランプ氏を黙認するのではなく、むしろ同氏に対抗しようとすることが政治的に人気を集めるとみており、やや慎重な見通しを持っています。

私たちはまた、アイルランドのような経済にとっての影響も懸念視しています。この数年間、「ケルトの虎(Celtic Tiger)」とも呼ばれる同国は急成長を遂げてきましたが、これにおいては米国企業による多額の投資に支えられた部分も少なくありません。特にハイテク分野ではこれが顕著で、多くの企業が有利な税率を利用するために本社をアイルランドに移してきました。

ただしトランプ政権がこれらの雇用や投資を米国内に戻したいと考えていることは明らかで、そのような国内回帰(リショアリング)の動きが普及すれば、現地の不動産市場や経済の他のセクターにも影響を与える可能性があるでしょう。

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