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ポイント
米国では11月初旬に大統領選挙が行われます。その結果として主に4つの可能性が考えられます。そのうち2つは、共和党または民主党が大統領職と議会を制して圧勝するシナリオです。他の2つは、どちらかの政党が大統領または議会多数派のどちらかを獲得するものの、両方を制することはできないシナリオです。
本稿執筆時点の世論調査を見ると、いずれの候補者もリードしておらず、その差も誤差の範囲を出ていません。従って、4つのシナリオについてもそれぞれの確率に大きな差はみられません。どちらかが圧勝すれば、政権は議案を通す機会が得られるでしょう。逆に、ねじれとなった場合は、議論の余地のある法案の通過を困難にします。興味深いことは、4つの結果のうち2つが大統領と議会の支配権が分割されるシナリオだということです。選挙は接戦となっており、4つのシナリオの可能性はいずれも大きな差が無いため、これは事実上、穏健な法改正にとどまる確率が約50%であることを示唆しています。
このような結果となれば、株式市場に好意的に受け入れられる可能性が高いでしょう。投資家は、将来の企業利益を予想して株式価値を算定しますが、大きな変化がある場合には、将来の利益水準やタイミングの予測が複雑になります。ねじれとなる選挙結果であれば、法案は穏健なものとなり、圧勝よりも変化は少なくなります。投資家は将来の企業利益を自信を持って予測することができるはずです。
どちらの政党にも依然として圧勝の可能性があります。候補者やマニフェストには多くの違いがありますが、資本市場は、必然的に経済的な影響が大きい部分に焦点を当てることになるでしょう。これは以下の3つに分類することができます。
有権者だけが、自分たちが正しいと考えることを表明する機会を得ていることを認識する必要があります。株式市場や投資家は、何が起こりうるかを考えることしかできません。これは一つのリスクですが、投資家はそのリスクに対してどのように対応するかを選択することができます。
市場にとって、選挙は民主主義への定期的な投資と言えます。議論が巻き起こり、選挙結果については常に憶測が伴います。短期的には投資家の確信度に悪影響を及ぼす可能性がありますが、その一方で、選挙直後は政治情勢がはっきりする時期となります。政治情勢が明確になることと不確実性が低下することは、通常株式市場にとって前向きな原動力となります。しかし、2000年の大統領選に見られたような結果に対する混乱があれば、このような原動力は弱まり、遅れる可能性があります。
投資家の中には、起こりそうな結果に対する見通しを示し、世論調査や政治的懸念に基づいてポートフォリオを変更したいという誘惑にかられる人もいるかもしれません。対照的に私たち自身は、選挙結果を予測する上での優位性はないと認識しています。私たちは企業に投資するのであり、政治評論家ではないのです。したがって、リスクを政治に配分することはリスク・バジェットの無駄使いになると考えています。選挙イベントは、投資機会として活用するのではなく、ポートフォリオ全体の中で分散させるべきリスクとして扱っています。
その結果、私たちは複数のセクターにわたってバランスのとれたポートフォリオを維持しており、アクティブ・リスクの大部分は銘柄固有に由来するものとなっています。これはファンダメンタル分析主導のボトムアップ・アプローチと一致しています。実施された政策が、企業の成長性や本質的な競争優位性の変化につながるのであれば、それに応じて私たちは企業リサーチを調整し、必要であれば、企業のファンダメンタルズに対する評価も変更します。例えば、地政学的緊張の高まりと関税の脅威によって、多くの企業が材料調達先を本拠地に近い地域に変更しました。これは、私たちの企業評価の一項目であるエンドマーケットの成長性への評価に反映されています。国際取引の影響を受けやすい企業へのエクスポージャーを減らす一方で、ファクトリー・オートメーションの恩恵を受けられる企業を選好しています。
選挙はある程度の不確実性を生み出すものの、民主主義に対する継続的な投資でもあります。候補者が、有権者に貢献すると考える政策を通じて競争することは、民主主義の特徴と言えます。長期的に見れば、選挙が投資行動を決定した経験はあまりありません。企業の価値創造は、経済のサイクル、戦争、疫病を乗り越えてほとんど中断されることなく続いてきました。もし投資家が、米国選挙の短期的な結果に賭けて投機したいのであれば、ポートフォリオを通じてではなく、市場に直接賭ける方が効率的であるように思われます。
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