南アフリカ:明るい未来?

Dec 03, 2024

今年、世界中で数多くの選挙が行われており、エマージング市場も例外ではありません。その中でも、国レベルで、また金融市場に及んだ影響が大きかったのは南アフリカでした。本レポートでは、これまでの政府の取り組みと、経済と市場への影響を解説します。

背景:南アフリカの5月末の総選挙では、アフリカ民族会議(ANC)が議会の過半数議席を失い、国民統一政府(GNU)が結成されました。この政党は、ANCと民主同盟(DA)に加え、少数の小規模政党で構成されていますが、重要なこととしてより急進的な政策で知られる「経済的解放の闘士(EFF)」は含まれていません。この結果は、エネルギーセクターのパフォーマンス改善や財政収支の安定化、さらなる経済成長などここ最近見られるポジティブな経済モメンタムの継続に弾みをつけています。

市場とポジション:中期的には、南アフリカ資産、特に現地通貨建て債に対して前向きな見方を持っています。選挙および新政権の誕生後、資産が大幅に上昇したにもかかわらず、イールドカーブは依然として大きくスティープ化しており、アセットスワップはワイド化しています。こうした中、成長見通しの改善、財政ルールが見直される可能性、インフレ目標の変化などは、イールドカーブのフラット化やスプレッド縮小をさらに進展させる方向に作用します。より短期的には、南アフリカ・ランドは、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策や商品価格の方向感など世界的なマクロ要因に対して引き続き脆弱でしょう。外貨建て資産についても建設的に見ており、現地通貨建て債と同様に、スプレッド・カーブがスティープ化する中、長期ゾーンを選好しています。さらなる経済成長や財政緊縮政策、長期的な債務の持続可能性に対する懸念の減少をもたらす改革に進展が見られれば、スプレッド・カーブのフラット化とアウトパフォームの大きな余地があると思われます。

政治的安定対経済的潜在力:これは、南アフリカの経済的潜在力を解き放つために必要な要因の一つであると考えています。労働、教育、犯罪対策に関する大胆な構造改革や民間セクターの経済インフラへの参入を促す取り組みは、より長期的な潜在成長力を確実なものとするでしょう。

リスクと想定される政策の行き詰まり:経済政策は、概ね主要政党間で足並みが揃っています。より大きなリスクは、ブラック・エコノミック・エンパワーメント政策、国民健康保険、および長年の地政学の面での政党間意見の不一致から生じると考えています。しかし、私たちは、GNUの2大政党は、政党間の関係維持が自らの最大の利益であると感じていると考えています。ANC内にはひずみがあり、教育法案をめぐって緊張が表面化しつつあります。これに関連して、ANC幹部の要求によりDAや他の政党との摩擦を引き起こす可能性があります。ここで注視したいのは、以前のアパルトヘイト政策のレガシーであるセンターオブエクセレンス(優秀な人材を集約する組織)を維持しつつ(すなわち、選抜教育)、より効果的で公平な教育を、人々に提供できるかということです。

今後の政治的安定:短期から中期的に政治的安定は維持されるとみており、ANCの新たなリーダーが選出される2027年の次回のANC党大会までは問題は生じないと考えています。DAは、今こそ国の管理と改革において影響を与えるチャンスであると認識しており、最近の教育法案を巡って見られたように、権力維持のために妥協する意思があるでしょう。ANCが政権を維持するためにパートナーを必要としていることも事実です。しかし、その結果、ANCが次回の総選挙を見据える中で、GNU内で分裂が起きやすくなるというシナリオもあります。

改革への前向きな見方:国営電力会社であるEskom社など国営企業(SOE)の改革が進んでいますが、これはおそらく、前政権からのモメンタムによるものです。また、同国の鉄道公社であるTransnet社にも、期待が持てる改革の兆しが見えてきています。政府は、国営企業の競争相手として民間セクターを参入させることで、何が機能するかを理解してきていると考えられます。

改革成功のシグナルとしてのデータ:多様な税金による歳入創出、歳出管理、効率化がもたらす財政面の効果を追跡することが重要と考えています。ここ数年続いた計画停電の問題に関しては、Eskom社のエネルギー利用可能率(EAF)を追跡していきます。現時点ではほとんどが状況維持による回復であると見ていますが、EAFの継続的な改善は、同社の改革および、同国の成長を下支える電力供給の安定性を確認する上で重要な手がかりとなるでしょう。Transnet社に関しては、鉄道や港湾の貨物量や物流に関する指標などを注視していきます。

エネルギーの安定供給とインフラの改善:エネルギー供給の安定性は過去に比べて問題ではないと考えており、独立系発電事業者(IPP)プロセスと自家発電の両方を通じて、膨大な再生可能エネルギーがオンライン化されました。コストは減少しており、IPPはオンライン化されることがはるかに魅力的になっています。今では多くの発電が遠隔地で行われるため、送電分野での成長は重要であり、今後のインフラの重点分野となります。供給面での制約は少なく、今後もこの状況は継続すると見ています。現在、インフラにおいてより重大なストレスとなっているのは、鉄道や港湾の物流だけでなく、特に政治的なホットスポットであるクワズールー・ナタール地域における水の安定供給でしょう。

FDIを通じた潜在力の開放:南アフリカは海外直接投資(FDI)の輸出国であったなかで、残念な状況にあります。対内直接投資が増えない理由には、同国が常に誤った理由、例えば、電力不足、犯罪、鉄道の整備不足、ストライキ、非効率な公共交通システム、技能不足/頭脳流出、汚職といったニュースで注目されていたことが考えられます。しかし、GNUの取り組みにより一連のニュースは好転し始めていると考えています。計画停電の状況に改善が見られており、Transnet社がEskom社の立て直しストーリーの追い風になることも期待されています。ハンガリーの自動車産業の例のように、FDIでの目立ったサクセスストーリーは先導役として役立つでしょう。FDIは、持続可能な経済成長の推進力(すなわち、債券発行に頼らない資金調達)として重要であると同時に、多国籍企業が国際的なベスト・プラクティスをもたらす傾向があるため、技術変化/生産性向上をもたらすことにも役立っています。ハンガリーの例と同様に、クラスター効果は好循環を生み出すことができます。

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