ルーマニア大統領選挙:衝撃的な勝利は警鐘になり得るか?

Dec 06, 2024

ルーマニア大統領選挙が市場のボラティリティを生み出し、アクティブ運用の投資家にアルファ獲得の機会をもたらす中、シニア・ソブリン・ストラテジストのティモシー・アッシュが、極右候補であるカリン・ジョルジェスク氏が直近の大統領選挙において首位で決選投票へ進んだことについて考察します。

11月23~24日の週末にルーマニアで行われた大統領選挙第1回投票での、ジョルジェスク氏の勝利を表現するとすれば、「流星のように華々しい」となるでしょう。ジョルジェスク氏は、次回12月初旬に行われる決選投票で、「ルーマニア救国同盟(USR)」の親欧州改革派候補、エレナ・ラスコニ党首と対決します。

親プーチン派とポピュリスト

ジョルジェスク氏の勝利は、ハンガリーのオルバン首相、スロバキアのフィツォ首相、ジョージアの「ジョージアの夢」政党に続く、親プーチン派の政治家にとってのもう一つの勝利として描かれつつあります。ルーマニアはもちろん、欧州各地でも、ウクライナ戦争への倦怠感が蔓延しているため、親ロシア派、反西欧派の政治活動が見られることは確かです。

しかし、この勝利から他に幅広く3つの結論が得られると考えています:

  1. 政治的影響力: ジョルジェスク氏の勝利は、新しい形態の政治的影響と選挙運動の力、そして、民主主義の危機を示しています。ジョルジェスク氏は、非常にインパクトのある、ソーシャルメディアを駆使した追い込み型のキャンペーンを展開しました。
  2. ポピュリズム: 現在の世界的な政治状況では、ポピュリズムへの支持が高まっています。大量移住によって、投票者は移民に対して敏感となっており、特に新型コロナウイルス収束後に生活費の危機で大きな打撃を受けた場所ではその傾向が強く見られます。
  3. 現職への支持低迷: 今年は、米国のバイデン大統領と民主党、南アフリカのANC、トルコの地方選挙でのエルドアン大統領、インドのモディ首相、英国の保守党など、世界中でこのような動きが見られています。

しかし、ジョルジェスク氏はまだ第1回投票で23%の票しか確保しておらず、他のナショナリスト候補であるジョルジュ・シミオン氏の票もジョルジェスク氏に流れると仮定しても、その合計はまだ37%に過ぎないことを忘れてはなりません。これは、12月の決戦投票で勝利に必要な51%にまだ及びません。

これに対して、社会民主党(PSD)、国民自由党(PNL)、USR、ハンガリー人民主同盟(UDMR)の親EU候補の票を合計すると58%に達します。

損失は大きいのでしょうか

さらに、EUからの補助金の力を過小評価することはできません。2021~2027年の最新のEU予算計画の下で、ルーマニアは、EU内の最大の純受益者として、復興レジリエンス・ファシリティ(RRF)に加えて、 EU補助金1で830億ユーロ以上を得る予定です。これは、GDPの3~4%に相当し、財政赤字と経常赤字の半分を占めます。

ジョルジェスク氏が大統領に就任すれば、EUとの関係は悪化し、隣国ハンガリーのオルバン首相と同様、こうした補助金をリスクにさらすことになるでしょう。

ここで浮かび上がる疑問は、有権者が実際にジョルジェスク氏に投票し大統領にすることで、国の経済的繁栄を本当に危険にさらすかどうかです。確かに、一部の有権者は、(政治エリートが得ているような)EU補助金からの個人的な利益はほとんど得られなかったと考え、失うものは何もないと考えるかもしれません。

ルーマニアの選挙は、政策と政治がどのようにボラティリティを生み出すかを示す好例となっています。逆に考えれば、このボラティリティは、私たちのようなアクティブ投資家のアルファ獲得機会を生み出します。

1 ルーマニア財務省

本資料はブルーベイ・アセット・マネジメント・インターナショナル・リミテッド(以下、当社)が情報の提供のみを目的として作成したものであり、特定の投資商品の取引や資産運用サービスの提供の勧誘又は推奨を目的とするものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。本資料は信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、当社がその正確性、完全性、妥当性等を保証するものではなく、その誤謬についての責任を負うものではありません。本資料に記載された内容は本資料作成時点のものであり、今後予告なく変更される可能性があります。また、過去の実績は将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。なお、当社の書面による事前の許可なく、本資料の全部又は一部を複製、転用、配布することはご遠慮ください。当社との金融商品取引契約の締結にあたっては、下記の投資リスク及びご負担いただく手数料等について契約締結前交付書面等を十分にお読みいただきご確認の上、お客様ご自身でご判断ください。

 

投資リスク
当社との投資一任契約に基づく運用においては、原則、外国籍投資信託を通じて、主に海外の公社債、株式、通貨等の値動きのある資産に投資しますので、基準価額が変動します。従って、契約資産は保証されるものではなく、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は全てお客様に帰属します。主なリスクとして、価格変動リスク、為替変動リスク、金利変動リスク、信用リスク、流動性リスク、カントリーリスク等があります。また、デリバティブ取引等が用いられる場合、デリバティブ取引等の額が委託保証金等の額を上回る元本超過損が生じることがあります。なお、投資リスクは上記に限定されるものではありません。

 

手数料等 
当社の提供する投資一任業に関してご負担いただく主な手数料や費用等は以下の通りです。手数料・費用等は契約内容や運用状況等により変動しますので、下記料率を上回る、又は下回る場合があります。最終的な料率や計算方法等は、お客様との個別協議により別途定めることになります。

 

Fee table

 

なお、上記には、投資一任契約に係る投資顧問報酬、外国籍投資信託に対する運用報酬が含まれます。この他、管理報酬その他信託事務に関する費用等が投資先外国籍投資信託において発生しますが、契約内容や運用状況等により変動しますので、その料率ならびに上限を表示することができません。