右寄りに

Sep 12, 2024

稀に見る選挙イヤーとなった今年、投資適格債チームのシニア・ポートフォリオ・マネジャーであるカスパー・ハンスが、欧州の直近の選挙結果に対する市場の反応や、同チームのポートフォリオのポジションを解説します。

2024年は、少なくともこれまでのところ、世界中で右派政党の勢いが加速している傾向が見られます。とりわけ欧州においては、ほとんどすべての国でいわゆる極右政党が人気を集めており、場合によっては政権を獲得しています。フランスでは今夏、さらにより最近ではドイツのテューリンゲン州で、右派政党の急伸が見られました。

その理由は様々ですが、一般的には、市民の怒り、そして「取り残された」という心情が右派の台頭を促しているように見受けられ、さらにロシアとウクライナの紛争や、パンデミックに起因するインフレによってもたらされた不確実性の増大がこれに拍車を掛けているように思われます。欧州全域で、既成政党の間では警戒感が強まり、過去の政策が有権者を失望させてきたという認識が高まっています。ドイツでは、16~24歳の若い有権者の約16%が極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)に投票し、これは5年前の約3倍の数でした。一方、連邦政府の連立与党である「緑の党」に投票したのはわずか11%でした1。これまでは、左派に傾倒し、環境に配慮した環境保護主義的な考え方を好む傾向があったのは若者でした。

このような長期の地政学リスクが福祉や平和に与える影響は不明瞭ですが、より短期的な経済の歪みを予測するのはより簡単です。例えば、トランプ氏の移民や世界貿易との闘いは、米ドルとインフレに直ちに影響を及ぼすでしょう。なぜなら、移民政策は、全体として低い経済成長をもたらすだけでなく、より高い賃金と逼迫した労働市場をもたらす傾向があり、それは、ある者にとっては雇用の確保を促進しますが、他の者にとっては生産性の低下につながるためです。

欧州は、より慎重さが求められる状況です。移民政策と防衛政策は、各国政府が決定するのではなく、EUにとっての課題です。EUレベルでは、ドラギ氏が先頭に立って、よりナショナリズムな経済政策を推し進めています。近く発表される「ドラギ・レポート」では、これまでにも強調されてきたように、より大規模な軍事防衛、保護主義的な貿易政策、「移民に対する好ましくない態度」に対処する方法の確立に焦点が当てられる可能性が高いでしょう。

金融市場に関しては、フランスや、とりわけドイツの地方選レベルでの選挙結果は一時的に市場の混乱をもたらす可能性があるものの、現時点では大きな動きをもたらす要因ではありません。メローニ首相によるイタリアの右派シフトは、市場ではむしろポジティブに受け止められています。メローニ氏は中国(例えば中国の一路一帯構想からのイタリアの離脱はEUに支持されました)やロシアに対するEUの姿勢を支持しており、より現実的な右派の政治指導者です。

一方、フランスでは、ルペン氏のより内向きな政策よりも、右派と左派双方のポピュリスト的な政治家が提案する公共支出の増加に対する市場の懸念がより高まっています。ドイツでは、「ドイツのための選択肢」(AfD)は、既成政党に反対することや、親ロシアであること以外、ほとんどの分野で明確なアジェンダを持っていません(防衛面では、左派相当の「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟」(BSW)も同様ですが)。

年初時点では、ファンダメンタルズ面を踏まえ、RBCブルーベイのグローバル投資適格国債戦略等ではフランスをアンダーウェイトしていましたが、総選挙の第一回投票の後、わずかにアンダーウェイトを減らしました。右派政党からの市場への政治的影響の恐れが薄れたからです。また、極左政党が権力を握るのではないかとの懸念も後退したと判断しました。

一方で、4-6月期にはそれまで保有していたスペインのオーバーウェイトを解消しました。EU財政による政府支出の一部についてEUが同意する前に、来年の予算交渉が欧州国債のスプレッド(ドイツ国債対比での上乗せ利回り)を拡大させる可能性があるとの見方が背景にあります。EUが政府支出について同意すれば、財政統合に向けたさらなる一歩になるでしょう。

ただしこの点については、市場は当面、財政統合に向けた動きをそれほど材料視しないでしょう。というのも、EUは当面、雇用や地政学的な強さ、「取り残されない」という心理を促すための、より広範な安全保障対策という点で人々の需要に応えるために、行動するとみているためです。

1 www.dw.com

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