新年の花火

Jan 14, 2025

2025年が華々しく始まりました!

コメント要約

  • 英30年債利回りは、90年代後半以来となる5.40%という驚くべき水準に達しました。
  • ドイツの企業の景況感やインフレ指標が予想を上回ったことなどから、欧州中央銀行(ECB)の利下げ見通しが大きく修正される展開となりました。
  • カナダのトルドー首相による辞任表明は、今年春の解散総選挙、そしてカナダ保守党による新内閣発足への道を開きました。
  • エマージング市場では、ブラジルの価格変動性が高止まりし、ブラジル・レアル及び金利市場は最安値近辺で推移しています。

金融市場では昨年末からの国債利回りの上昇傾向が年明けも続く展開となり、米10年国債利回りは4.7%に到達しました。昨年9月に米連邦準備制度理事会(FRB)が50bpsの利下げを実施して以降、実に100bpsもの金利上昇が見られていることとなります。

この先1年間で想定されるシナリオを勘案し、長期国債の利回りに関しては引き続き上昇圧力に晒されると考えています。財政及びインフレへの懸念が早期に解消する可能性は低いとみられるためです。

また先週は、日本や英国でも国債利回りが数年来の高水準に達し、10年国債利回りで見てそれぞれ、2011年と2008年以来の水準に上昇しました。

中でも英国は、2022年後半を彷彿とさせる借り入れコストの上昇がヘッドラインを賑わせ、金融市場でも話題の中心となりました。英30年債利回りは、90年代後半以来となる5.40%という驚くべき水準に達しました。その動きの一部は、外的(米金利)要因や需給(発行)要因に起因するものと言えますが、これまで継続的に述べてきた通り、構造的な要因が引き続き英国経済に暗い影を落としています。

インフレ圧力は高止まりし続け、同時に悪化の一途を辿る成長見通しに直近の予算も拍車を掛け、政府財政をさらに逼迫させています。

直近のサービス業の購買担当者景気指数(PMI)では、投入価格指数が8か月ぶりの水準にまで加速したことが示される一方、英国商業会議所(BCC)の調査によれば、50%超の企業が今後数か月で価格の引き上げを検討する中で、事業センチメントは急速に悪化しています。

さらに一般家庭も、この4月からエネルギー価格の上昇や水道料金の値上げ、地方税(カウンシル・タックス)の上昇などに直面し、家計をさらに逼迫させる要因となるでしょう。

政治的には、政府の公式な成長予想(2025年に2%)は既に野心的と思われ、3月には下方修正される可能性が高く、更なる財政赤字懸念につながるとみています。借り入れコストの上昇が財政状況の悪化につながる負のスパイラルとなり、借り入れや公的支出の増加に対する神経質な目を踏まえ、与党労働党は自らの財政ルールを破り、増税を行わないとの公約を裏切ることとなるでしょう。英国資産に対しては引き続き弱気な見方を維持しており、財政及び政治面での悪循環を懸念しています。

米国では、昨年11月の選挙後に上昇基調にあった米ドルが、今年最初の一週間の取引において乱高下する展開となりました。米国経済は底堅さを維持するとみているものの、ロング側でのポジションが重いことや、この先数か月間のトランプ氏の関税政策関連のノイズを踏まえ、米ドルに対する強気な見方を縮小させることが賢明であると判断しました。

金融政策面では、FRBが2025年前半は政策を据え置くとの予想を維持しています。米ドル高基調などにより、金融環境はここ数週間で引き締められており、この先多くの経済的及び政治的不確実性が予想されることも事実ですが、現時点では米国経済は底堅い成長モメンタムを維持しています。その意味で、12月の雇用統計は2025年の米国経済を占う最初の試金石になるとみています。

ユーロ圏の債券市場では、ドイツのPMI指数やインフレ指標が予想を上回ったことなどから、欧州中央銀行(ECB)の利下げ見通しが大きく修正される展開となりました。金融市場では、ECBが今年7-9月期までに政策金利を2%に引き下げると予想されており、より早期の大幅な利下げ見通しが後退する展開となりました。

とは言いながらも、欧州は経済的にも政治的にも多くの困難に直面しており、この先数か月間において、米国との経済成長と金融政策面での格差は拡大し、より明確に為替の動きに反映されるとみています。したがって、ユーロ/米ドルについてはこの先パリティを試す展開になるとの見方を維持しています。

日本ではここ数週間、日銀からの材料に乏しい状態が続いていることから、投資家の間では今月後半の利上げが選択肢としてあるのかどうかを見極めようとする動きが見られています。経済活動や賃金に関連した指標は堅調さを維持し、インフレの上方修正につながりそうですが、円が米ドルに対して1米ドル=160円に近づいていることは、政策当局者の間での為替相場への警戒を維持する要因となるでしょう。

とは言いながらも、昨年12月の前回会合から、状況がほとんど変化していないことも事実です。トランプ次期政権下での米国の政策は依然として言動やつぶやきに留まっており、今年の春闘の賃金交渉も、3月が近づいてくる中で詳細なデータが今後明らかになるでしょう。

ただし、日本が真に回避すべき展開は、インフレ圧力の過度なオーバーシュートを容認してしまうことであると言えるでしょう。金融政策を通じてこれに対処せざるを得なくなれば、将来のいずれかの時点において大きな痛みを伴う判断をしなければなりません。引き続き、日銀は今月の会合で政策金利を0.50%に引き上げると予想しており、直後に市場は円高という形で反応するとみています。構造的には、日銀が買入を縮小させる中で、日本10年国債利回りが上昇する余地があるとみており、1.25%をその目安としています。

その他の地域では、先週カナダのトルドー首相が辞任を表明し、今年春の解散総選挙、そしてカナダ保守党のポワリエーブル党首による新内閣発足への道を開きました。マクロ経済的に見れば、その結果として、トルドー内閣よりもかなり緩和的なトランプ次期米政権からのスタンスが見込まれます。背景には、トランプ氏との政策面での親和性がよりあることで、例えば、米国とカナダがともにエネルギー関連政策で足並みを揃え、エネルギー生産を増産させることで輸出を増やし、さらにエネルギー価格の低下を図る可能性も十分に考えられます。

エマージング市場(EM)では、ブラジルの価格変動性が高止まりしました。ブラジルの中央銀行は先月、極めて積極的な政策介入を実施し、負のスパイラルを断ち切ることを目的として200億米ドルの外貨準備を使用しました。これまでのところ、介入策は為替相場に一定の安定感をもたらしましたが、ブラジル・レアルは最安値近辺で推移しており、金利市場も同様です。

トランプ氏が間もなく大統領に就任しようという中、力強い米ドルや米国で高金利が続く見込みも、EM現地市場のセンチメント悪化につながっています。

投資適格社債のスプレッドは年初来でほぼ横ばいとなっています。例年同様に1月に入って発行額の増加が見られますが、これを前にした投資家のポジションは比較的軽かったほか、利回りを追求する資金流入も見られます。発行増の継続や、ベースとなる国債利回りの上昇、米国の政治的ノイズなどが、この先数週間で投資適格社債市場のボラティリティ上昇につながるかどうかを興味深く見守っていきます。

現時点において、社債をショート・バイアスとするための機会コストは低いとみているものの、米国経済に対して比較的強気な見方を維持している中、社債に過度に弱気になることにも慎重になっています。

その意味で、クレジット・リスクはほぼフラットとしながら、スプレッドが拡大した時点でより魅力的な水準でポジションを積み増すことが賢明と判断しています。一方、ここ最近述べている通り、足元では金利やクレジットよりも通貨において投資機会が拡大しているとみており、ポートフォリオの全体的なポジションにおいても、そのような見方を反映させています。

今後の見通し

米ドルに対しては強気な見方を維持しながらも、その確度をやや弱め、米国及び日本における金利上昇を予想しています。依然として(日本の長期国債を除いて)キャッシュ金利に対して長期債を保有するプレミアムが十分に付与されていないとみており、イールドカーブがスティープ化する余地がいまだにあると考えています。

また、スプレッドに関しては極めてタイトな水準にあり、クレジット債及びリスク全般に対してやや慎重な見方をしています。そんな中、政治的及び地政学的な不確実性によって、経済的な不透明感はさらに高まるとみており、トランプ次期政権誕生を控える中では尚更と言えそうです。

イーロン・マスク氏が政治的なロケットを発射し混乱を招いて、欧州の政治家の不快感を大いに買っている一方で、英国政策当局者の懸念材料は、新年の打ち上げ花火のような英国債市場でしょう。皆さま、改めまして新年おめでとうございます!

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