お祝い出来ない解放の日

Mar 31, 2025

4月が近づいていますが、「ただ乗り欧州」ではまだ春の気配を感じられません

コメント要約

  • 全ての自動車輸入に対して25%の包括関税を課すという決定が下されるなど、予想される関税引き上げにより市場の不安が高まっています。
  • 欧州では、政策当局者が米国の関税に対する強力な対抗措置として防衛・インフラ支出拡大を進めています。
  • 英国では、成長や借入コストに関する英予算責任局(OBR)の見積もりは楽観的過ぎると言わざるを得ず、英国債市場は既に、秋季予算における増税や追加的な支出削減に対するコミットメントを要求しているように見受けられます。
  • エルドアン大統領が政治的抗議活動の鎮圧に動いた後に、トルコの金融市場は落ち着きを取り戻しました。
  • 2025年後半には、米国の政策の転換点となるものがあるとの見方を維持しています。すなわち、大統領令が議会で制定された関税に置き換えられ、関税率もより抑えられた水準になるとみています。

トランプ米大統領が宣言した4月2日の「米国解放の日(Liberation Day)」を控え、先週の金融市場は、予想される関税引き上げや、世界経済への想定される影響に、依然として頭を悩ませられる展開となりました。

仮に、相互関税が「米国解放の日」の発表の根幹を成すものであっても、先週、全ての自動車輸入に対して25%の包括関税を課すという決定が下されたことは、米国政府によるこれまでのタカ派的なコメントのいくつかは後退するであろうといった慢心にショックを与えました。

このような動きは、今月初旬の下落からの回復が見られていた市場に、やや混乱をもたらしました。しかし、米国債市場はこのようなリスク許容度の低下や質への逃避による恩恵を享受することが出来ませんでした。

むしろ、潜在的な貿易戦争はスタグフレーション・ショックにつながり、国内消費と成長が圧力を受けるにも拘わらず、価格を押し上げるであろうとの懸念を背景に、米国債利回りは上昇しました。

現時点では、経済指標のハードデータは年初来での基調的な経済活動が概ね堅調であることを示しています。ただし先行指標においては、引き続き弱含みの可能性が示唆されています。例えば、先週発表された消費者信頼感調査の将来予想は、関税や政府効率化省(DOGE)による支出削減が懸念される中、過去12年間で最も低調な水準となりました。

同指標は非常に変動が大きくなり得るもので、さらに将来に関する個人の見方は、政治的なバイアスによっても大きく左右されているようにも思います。つまり、現在、トランプ政権の政策アジェンダを評価する上で、多くの民主党支持者は極めて悲観的な見方を示す一方、トランプ支持者はより前向きな見方を示す傾向にあるということです。

実際のところ、クレジットカードに関連したデータを掘り下げてみると、延滞率の低下は消費者のバランスシートが比較的健全であることや賃金が上昇していること、失業率が低い水準に留まっていることを示唆しています。

財政政策に関しては、DOGEによる人員削減による痛みが、今後数カ月間で幾らか感じられるようになる可能性があるでしょう。歳出削減は最終的には減税を賄うためと考えており、このことは、今年も来年も、財政面からの成長への寄与は限定的となることを意味しています。

したがって、この間債務返済コストが大幅に削減されない限り、連邦政府の財政赤字はGDPの6.5%前後に留まると予想しています。当社の分析では、経済活動はこの先数四半期に亘って冷え込み、1.5%前後の潜在成長率を下回る成長率を見込んでいます。

しかし、インフレ率が上昇に転じれば、米連邦準備制度理事会(FRB)が近いうちに金融政策を緩和する可能性は低いとみており、結果として、米国債利回りは一定のレンジ内で推移することになると予想しています。米10年国債利回りについては、4.2%程度でショート・ポジションを構築しましたが、現在は4.5%を目標にしており、同水準が概ねフェアバリューに近いとみています。

欧州では、政策当局者が米国の関税に対する強力な対抗措置を準備しているようです。ヘグセス米国防長官が欧州を「全く情けない(pathetic)」と表現したメッセージがリークしたことで、欧州各国の怒りはさらに高まり、グリーンランドに対するいじめ行動もそのような怒りに拍車を掛けています。欧州が防衛・インフラへの支出を増やし、財政拡大を進めていることにより、政治家は米国に対して厳しい姿勢をとることが出来るかもしれません。

政策当局者の間では、関税が負の供給ショックにつながり、金融政策はこれに対応するのに適していないとの一定の理解があります。マリオ・ドラギ氏などが訴えているように、現時点では財政出動の方がはるかに理にかなっています。財政支出の大規模な緩和が続き、インフレ率も上昇に向かうと思われることから、この先数ヶ月間、欧州中央銀行(ECB)がさらなる利下げを実施する必要性に関しては懐疑的にみています。

英国では、春季予算案の発表に多くの関心が集まりました。リーブス財務相は、財政計算にはほとんど余裕がないものの、英予算責任局(OBR)の財政ルールが引き続き守られていることを強調し、市場に安心をもたらそうとしました。

成長や借入コストに関するOBRの見積もりは楽観的過ぎると言わざるを得ず、英国債市場は既に、秋季予算における増税や追加的な支出削減に対するコミットメントを要求しているように見受けられます。2月の英国のインフレ指標は市場予想よりも良い内容でしたが、この点に関してはいかなる好材料も短命に留まるでしょう。

4月に公共料金の一斉値上げがあることから、4-6月期の英インフレ率は4%に上昇すると予想しています。その意味で、英政府は、より良い経済ニュースを期待し、それを祈りながらも、苦境に陥っているように思えます。しかしながら、利回りの上昇圧力を緩和すると考えられる、いくつかのテクニカルな手段はあります。

まず、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)に量的引き締め(QT)を止めるように伝えることでしょう。BoEによる英国債の売却によって生じる損失は直接予算に計上され、政府に大きな打撃を与えています。現時点ではQTの必要性はないと考えられ、この有害な政策を終わらせることで、英国債市場の需給環境が改善されるのみならず、英国財政にも有益となるでしょう。

次に、銀行のレバレッジ比率から英国債を免除することも、銀行が現在よりも多くの英国債を保有することを促すことにつながるでしょう。この点について言えば、現行の金融規制は、英国債よりもスワップ金利を保有する方が有利に設計されており、このことはイールドカーブの30年ゾーンにおいて、スワップ・スプレッドが-0.85%となっていることにも見られます。このように、不適切な政策決定が、英国債利回りを必要以上に押し上げる要因となっています。

債務返済コストが英国において最大かつ急速に拡大する財政支出の一つとなっている時代において、これらの問題に対する労働党政権の理解不足は、有権者が政府に求める優先度の高い政策に拠出するための資金が少なくなってしまうことを意味しています。

日本では、春闘が5.5%近いの賃上げという、過去34年間で最も力強い伸びを示したことから、国債利回りが上昇を続けました。しかし、消費者物価指数(CPI)が過去3年間一貫して2%を上回っているにも拘わらず、加藤財務相は日本が物価デフレ期を恒久的に脱却したかどうかについての明言を避けています。

結果として、円相場は、対ユーロ、対米ドルともに過去1か月で下落し、軟調に推移しています。他の地域に目を向けると、トルコにおいて、エルドアン大統領が政治的抗議活動の鎮圧に動いた後に、金融市場は落ち着きを取り戻しました。ある意味、私たちは政治的に強硬な人間が率いる時代に生きているようであり、政治的表現を抑圧することは、ほんの最近までと比べても、今日それほど驚くべきことではないように思います。

社債市場では、相対的にボラティリティは抑制されているものの、引き続き株式市場よりも良好な状況にあります。景気減速の懸念が、リセッションの可能性を懸念するまで発展した場合には、この状況に変化が見られるでしょう。

現時点では引き続きその可能性は低いとみているものの、スプレッドがタイトな水準にあり、スプレッドのさらなる縮小余地が限られているとみられる足元では、クレジット・リスクをオーバーウェイトすることによるメリットは限定的であると考えています。ポートフォリオでは引き続きロング・ポジションに対するヘッジ・ポジションを維持しており、アウトライトで方向性を持った姿勢を取るよりは、クレジットにおける相対価値の機会に焦点を当てる姿勢を維持しています。

今後の見通し

この先を見据えると、今後の政策の不確実性を踏まえ、マクロ経済環境を明確に見通すことが極めて困難となっています。しかし、世界的に見れば、政府債務は減少することなく増加し続けており、このことは、イールドカーブのスティープ化につながるはずです。

加えて、来年にはインフレ率が低下よりも上昇に向かうとみられることから、今後数ヶ月間で米国の成長にプレッシャーが掛かることが予想されるものの、絶対的な利回り水準が低下することは困難になるかもしれません。

引き続き、今年後半には、米国の政策の転換点となるものがあるとの見方を維持しています。すなわち、大統領令が議会で制定された関税に置き換えられ、関税率もより抑えられた水準になるとみています。しかし、そこまでの道のりは平坦ではないでしょう。

特に、トランプ政権のアジェンダの進め方は、海外における友人をなくしてしまうものです。もし、トランプ大統領やマスク氏などが諸外国を従えることが出来ると考えているのであれば、そうではないことに突然気付くかも知れず、引き続き、当社では米国の行動が予期せぬ結果を招くことについて懸念を抱いています。

例えば、インドやBRICS以外の国々は、その答えとして中国に目を向けるでしょうか。また、欧州やカナダ、その他の「有志連合」諸国は、トランプ氏とそのミニオンズに対抗するために、手を組もうとするでしょうか。もしそうであれば、次なる米国の反応はどうなるでしょうか。これらは全て、答えるのが難しい問題です。

4年という時間軸で見れば、今日よりも米国の経済がさらに強く、支配的となっているかもしれません。しかし、正直なところ、物事が最終的にどのように展開するのかを、果たして正確に予測出来る人はいるのでしょうか。現時点でより予測可能と思われるのは、目先数ヶ月間では多くの混乱が生じ、困難な環境になるであろうということです...

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