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欧州最大の経済大国であるドイツは11月、連立政権の崩壊で混乱に陥りました。2025年初頭に解散総選挙が行われる予定ですが、シニア・ポートフォリオ・マネジャーであるカスパー・ハンスの見解をお伝えします。
来年を見据えると、オラフ・ショルツ首相はもはやその座に居続けることは叶わないでしょう。彼の政策はあまりにも抑制的で、債務上限問題でもウクライナ問題でも足跡を残すことができませんでした。確かに現在のドイツは戦後最も困難な時期にあります。スペイン風邪以来の深刻なパンデミックとなった新型コロナウイルスの経済的なインパクトや、中国の輸出攻勢(特にEV領域の競合はドイツを上回ります)、ロシアによるウクライナ侵攻など様々な問題に直面しました。
また、欧州のエネルギー市場への厳しい状況に対する財政的支援も足りていません。これは「黒いゼロ”schwarze Null”」(財政均衡へのコミット)という同国のスタンスによるものです。終わりが見えているような問題への対処であればこれで良いのかもしれませんが、現在進行中のロシアによる地政学的脅威や、中国に産業セクターのリードを許している状況、米国によるデジタル領域の支配などに対処するには、現政権を上回る投資が必要です。
新しい連立政権のフォーメーションには困難が伴います。右派・左派のポピュリスト的政党がほぼ3分の1を占める予定であり、「黒いゼロ」の変更などの絶対多数を必要とする決定を阻止する可能性があります。加えて、世論調査でリードしている最大野党「キリスト教民主同盟(CDU)」も、過半数を取るために2つの連立パートナーを探す必要に迫られるでしょう。
CDU党首のメルツ氏からすれば、ショルツ氏の社会民主党(SPD)との連立ではなく、「ジャマイカ連立」(CDU/CSU・自由民主党・緑の党の連立:党のカラーがジャマイカ国旗の配色に近いことから)が望ましいと見られます。しかしながら、ここでも緑の党と自由民主党との大きな政策の違いを埋めなければなりません。
選挙プログラムは明確であり、歳出削減を通じて生産性を高めることを目指しています。しかしそれだけでは十分ではありません。メルツ氏が望んでいること、そして実現可能なソリューションは、欧州としての行動でしょう。それは防衛費の増額ですが、このパズルを解くためには、欧州のパートナー国との協力だけでなく、EUによる資金拠出も必要です。
EUの7か年予算において、ドイツは唯一の実質的な純拠出国となっています。仮に拠出が減らされたとしても、それがEU全体の共通の防衛費に充てられるとしたらどうなるでしょうか。これはもはや後戻りのできない欧州の財政統合、すなわち長期的に高い生産性の可能性を秘めた統合の始まりとも言えるでしょう。NATOの要求する防衛費2%レベルは、支出を考慮に入れなければ約3,000億ユーロ程度となります1。
ドイツにとっては、エネルギー・インフラのさらなる拡大とデジタル・トランスフォーメーションに必要な支出のための1,000億ユーロの成長パッケージの道が開かれることになります。これは米国への依存を最小限にすることにも繋がります。これに加えて、もしポーランドがEUを通じて防衛費を調達できれば、これにドイツがEUに拠出している200億ユーロが加わる可能性があります2。なお、ポーランドはEU予算における最大の純受益国です。
また、二大政党による大連立の可能性もあるかもしれませんが、それは債務問題のギリギリの交渉の結果起きるものとなるでしょう。これはSPDにとってあまりメリットにはならないでしょうし(SPDは野党でいた方が支持を取り戻せると見られます)、この連立から生まれる妥協案も満足のいくものではないでしょう。メルツ氏は、2つの最悪の選択肢から選ぶことになります。すなわち、さらに多くの債務を背負うことになるか、欧州統合を封印するか、ということです。これが彼の政治的なレガシーとなるでしょう。
今のところ、当社は欧州へのプレッシャーは続くとの見方から、通貨ユーロをショートし、欧州金利に対する前向きな見方を維持しています。とりわけ、間近に迫っている貿易戦争に関しては、欧州は米国と中国の板挟みとなり、潜在的に大きな影響を受けると見ています。
また、迫りくる紛争の和平交渉も、この地域の安定に繋がらない可能性もあると警戒感を持っています。その意味でバルト三国に関してはショート・ポジションとしていますが、その後のインフラ投資の恩恵を受けるであろうルーマニアに関しては選好を維持しています。
現時点で欧州をポジティブに見れる材料としては、欧州が投資に舵を切る可能性があるという点でしょう。もっとも、メルツ氏がそれを実現できるかは、見極めていかないといけません。
1 RBC GAM
2 Spending and revenue - 欧州委員会
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