Location
Please select your investor type by clicking on a box:
We are unable to market if your country is not listed.
You may only access the public pages of our website.
コメント要約
トランプ米大統領がカナダとメキシコに対する関税を発動し、中国からの輸入品に対してはさらに10%の関税を上乗せしたことで、これらの動きが経済に与える潜在的な影響への警戒感から、先週の米国市場はやや不安定な動きとなりました。貿易政策が米国の成長を圧迫するとの懸念から、米国債利回りが低下する場面も見られました。
しかし、関税がインフレに与える影響は、成長への影響と同等もしくはそれ以上に大きくなる可能性があると考えています。消費者物価指数(CPI)が上昇に転じる可能性が高いことから、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後数ヶ月間で利下げを実施することは難しくなるとみています。したがって、市場が年内75bps超の利下げを織り込んだ時点で、金利デュレーションをショートに移行しました。
一方、ドイツのメルツ次期首相による財政政策の大転換により、ドイツで防衛及びインフラストラクチャーに対する支出を大幅に増やす土台が整いましたが、これはEU全体に広がるとみています。対GDP比1%を超える国防支出については、財政赤字に関するドイツの「ブラック・ゼロ」のルールから除外されるようにすることで、メルツ氏は、マリオ・ドラギ氏のかつての言葉をなぞらえて、ドイツの安全保障を確保するためであれば、まさに「出来ることは何でもする」という姿勢を示しました。
ドイツの防衛およびインフラへの支出総額は、今後10年間で1兆ユーロ近くになる可能性があり、ドイツの国防支出は対GDP比で見て米国と同水準に引き上げられます。このような動きがEU全体で再現されることで、GDPを年間0.7%程度押し上げる可能性があると試算しており、GDP成長は昨年の0.8%から1.5%程度に上昇すると期待しています。同様に、ユーロ圏のインフレ率も、ECBの物価目標をやや上回る2.5%程度で落ち着く可能性があるとみています。
その場合、先週の欧州中央銀行(ECB)による2.75%から2.50%への利下げは、今サイクルにおける最後の利下げとなるかもしれません。これを踏まえて、ユーロ圏の預金金利が年末までに2%に到達すると織り込んでいた金利先物市場において、金利をショート・ポジションに移行しました。また、今回の金利見通しの修正は、為替市場におけるユーロのショート・ポジションに対しても慎重にならざるを得ないことを意味します。
これまで、2024年後半から2025年にかけて、ユーロに対しては比較的弱気な見方を維持してきました。しかし、もはやユーロに対して弱気となるにふさわしい理由は薄れています。一方では、ユーロ圏経済がどれだけ輸出に依存してきたかを踏まえれば、欧州における関税の潜在的な影響は引き続き懸念されます。
しかし、EUと米国の成長率及び金利差の縮小は、ユーロに対する見通しの改善を意味します。一方、米国に対して世界的に蔑視の目が強まることで、資産配分が米ドル資産から離れていく可能性もあるでしょう。この点においては、先週、欧州の防衛産業の発展を支援するために、ノルウェーのソブリン・ウェルス・ファンドが米国の資産を売却すると発言したことは注目を集めました。
また、ユーロ圏における負債の相互化の加速は、同ブロック内でのさらなる統合を意味し、周辺国債のスプレッドにとって恩恵をもたらすでしょう。イタリアのようなソブリン・クレジットにとっては、名目利回りの上昇は懸念材料となり兼ねませんが、今年を通して、イタリア国債のスプレッドはフランス国債と同等の水準に縮小する可能性があるとの構造的な見方を維持しています。これは昨年、スペイン国債がフランス国債と同等のスプレッドに収斂した動きに近いものとなるでしょう。ドイツ国債に関して言えば、ユーロ圏の預金金利が2.5%近辺に落ち着けば、ドイツ国債利回りは長期的に3%程度がフェア・バリューとなるかもしれません。
先週は、英国での話題にはそれほど注目が集まりませんでした。英国に関しては、引き続きインフレ動向や財政余地の欠如に対する懸念を抱いています。英国債利回りがドイツ国債利回りにつられる格好で上昇する中、借入コストが上昇し、英国の負債を巡る予測に影響をもたらすリスクが高まっています。少なくとも、スターマー政権は、関税に関してトランプ米大統領や米国の通商強硬派の怒りの対象となることを回避出来ていると見られ、そのことに幾らか希望を抱くことが出来るでしょう。
それとは対照的に、カナダは、トルドー首相に対するトランプ氏の個人的な軽蔑の念に基づく逆風を真っ向から浴びている格好です。トランプ氏は、米国の「51番目の州」の知事としてトルドー氏をいじめることを楽しんでいるのみでなく、カナダの有権者が同首相に長い間愛情を注いでいないことに満足しているようです。
ただ、トランプ氏に対する反感の高まりは、トルドー氏の後任としてのマーク・カーニー氏への支持を後押しする要因となっており、政権交代が予想されていたカナダの選挙結果は以前に比べて確実性を失っています。しかし、このことは目先、カナダの政治家がトランプ氏に対して、融和的というよりもむしろ闘争的になる可能性が高いことを意味しており、短期的には、さらなる泥沼化や関税の引き上げにつながる可能性があるでしょう。これは、カナダ経済に重大なダウンサイド・リスクをもたらす可能性があります。
しかしながら幸いなことに、米国株の下落が米国の態度を軟化させる要因となる可能性があります。そのような文脈において、中期的には、隣国同士の強固かつ生産的な関係によって全て利益が最善の形でもたらされると確信しています。その場合、数週間もしくは数ヶ月後には、最終的により許容可能な10%程度の関税で落ち着く可能性があると考えています。
日本では、実質金利が低すぎることに起因する円の過小評価に対する懸念を示す、トランプ氏の発言に注目が集まりました。円安を一因として日本の金利予想は継続的に上方修正され、米国債利回りが逆方向に動く中でも、日本国債利回りの上昇が続く要因となっていました。日本の10年国債利回りは、足元で1.50%をわずかに上回る、過去16年間で最も高い水準に達しています。
同利回りは1.5%から1.75%のレンジ内で安定するであろうと考えているため、長きに亘って保有してきた日本の長期国債のショート・ポジションについてはこのタイミングで解消することが適切であると判断しました。一方で、この先数ヶ月間、円のアウトパフォームが続くとの見方を引き続き選好しています。円は過去2カ月間上昇基調を辿ってきましたが、依然として円高トレンドの始まりに過ぎないと感じています。
社債スプレッドは、先週一週間もマクロ動向につられる動きとなりました。その点で言えば、ユーロ圏の社債は年初来で米国社債を上回るパフォーマンスとなっており、とりわけ欧州金融社債などのセクターが目立って良好なパフォーマンスを見せています。市場の上昇局面でエクスポージャーを削減すると同時に、クレジット・リスクのヘッジ・ポジションも解消することで、結果として、全体でのクレジットのベータ・エクスポージャーは概ねフラットとしています。
そんな中、目先の供給増の可能性を踏まえ、ドイツ国債が他のユーロ圏の債券と比較して下落していることから、ユーロ圏のスワップ・スプレッドは縮小傾向にあります。とは言いながらも、ドイツの債務水準は、対GDP比で非常に低い水準を始点としていることや、ドイツには潤沢な財政余地があるという点に留意した上で、スワップのバリュエーションはやや割高であると感じています。同価格評価については、すでにファンダメンタルズに照らして妥当な水準以上に動いている可能性があるでしょう。
この先を見据えると、米雇用統計の発表に続き、今週はCPIの発表が予定されています。これらのハードな経済指標については、比較的堅調さを維持するとみています。しかし、投資家は成長鈍化のいかなる兆しにも注目することになるとみており、これがリスク資産を試すことになるでしょう。
とは言え、トランプ米大統領の株価下落に対する許容度は低い見られることから、同氏が「S&Pプット」のような振る舞いを続けるであろうとの見方を強めています。実際、ビットコインやイーサリアムに加えて、いくつかの小規模コインをも含む、「暗号資産準備金(Crypto Strategic Reserve)」の創設が発表されたことは、米政権がいかにハイテク企業の富を支えることを重視しているかを浮き彫りにする興味深い出来事でした。
これらの市場が基本的には規制されていない状態であることを踏まえれば、ここには市場操縦が溢れているようにも見受けられます。株式市場に関して言えば、どの団体や世界のリーダーよりも、トランプ大統領の果たす責任が大きくなっていると言えるかもしれません。したがって、株価がさらに下落し始めたときに、彼がどのように行動や言動を修正するかどうかは興味深い点となるでしょう。
ここ最近の目まぐるしい変化を踏まえれば、トランプ氏が大統領に再び就任してからまだ6週間しかたっていないことに驚きを禁じ得ません。トランプ氏自身が先週、「まだ始まったばかりだ」と宣言したことからも、私たちは新たな日常の中で生きているように思えます。例えて見れば、誰かがビリヤード台に歩み寄り、ボールを出来る限り強く叩き投げ、結果としてボールがどこに行くのか、どのポケットに落ちるのかが検討もつかないような気分でしょうか。確かに、トランプ氏はカオスを楽しみ、マスク氏はシュンペーターの創造的破壊理論を大いに好んでいるようです。
しかし、米国の政策行動の意図せざる結果をについては、注意深く見守る必要があるでしょう。例えば、トランプ氏は長きに亘り、機関としてのEUを弱体化させようとしてきました。しかし、ドイツに財政の財布のひもを緩めさせたことで、結果としてトランプ氏が「欧州を再び偉大に(Make Europe Great Again; MEGA)」する一助となったと言える日が来るかもしれません(ただし幸いなことに、マスク氏及び同氏が支援した欧州各地の極右政党という形ではないようです)。実際、MEGA取引は現在、その魅力を失ったMAGA(Make America Great Again)取引に代わる存在として、急速に台頭しているようです。
本資料はブルーベイ・アセット・マネジメント・インターナショナル・リミテッド(以下、当社)が情報の提供のみを目的として作成したものであり、特定の投資商品の取引や資産運用サービスの提供の勧誘又は推奨を目的とするものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。本資料は信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、当社がその正確性、完全性、妥当性等を保証するものではなく、その誤謬についての責任を負うものではありません。本資料に記載された内容は本資料作成時点のものであり、今後予告なく変更される可能性があります。また、過去の実績は将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。なお、当社の書面による事前の許可なく、本資料の全部又は一部を複製、転用、配布することはご遠慮ください。当社との金融商品取引契約の締結にあたっては、下記の投資リスク及びご負担いただく手数料等について契約締結前交付書面等を十分にお読みいただきご確認の上、お客様ご自身でご判断ください。
投資リスク
当社との投資一任契約に基づく運用においては、原則、外国籍投資信託を通じて、主に海外の公社債、株式、通貨等の値動きのある資産に投資しますので、基準価額が変動します。従って、契約資産は保証されるものではなく、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は全てお客様に帰属します。主なリスクとして、価格変動リスク、為替変動リスク、金利変動リスク、信用リスク、流動性リスク、カントリーリスク等があります。また、デリバティブ取引等が用いられる場合、デリバティブ取引等の額が委託保証金等の額を上回る元本超過損が生じることがあります。なお、投資リスクは上記に限定されるものではありません。
手数料等
当社の提供する投資一任業に関してご負担いただく主な手数料や費用等は以下の通りです。手数料・費用等は契約内容や運用状況等により変動しますので、下記料率を上回る、又は下回る場合があります。最終的な料率や計算方法等は、お客様との個別協議により別途定めることになります。
なお、上記には、投資一任契約に係る投資顧問報酬、外国籍投資信託に対する運用報酬が含まれます。この他、管理報酬その他信託事務に関する費用等が投資先外国籍投資信託において発生しますが、契約内容や運用状況等により変動しますので、その料率ならびに上限を表示することができません。