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コメント要約
先週の金融市場では、米国債利回りが上昇しました。この先の「トランプ2.0」が、米国経済、ひいては世界経済に意味するところの現実を投資家が直視し始める動きが続いたことが、その背景にあります。いわゆる「クリーン・スウィープ(大統領選と上下両院選の全勝)」を達成してから、トランプ次期米大統領は、次期政権における主要ポストの指名候補を矢継ぎ早に発表しました。トランプ氏のアジェンダに対する忠誠が何よりも重視されたとみられ、複数の異例な指名は、明らかに国内でも海外でも人々を驚かせました。
とは言いながらも、これまでに発表された全ての候補者に関して、レームダック化した上院において承認される可能性は十分にあり、つまりトランプ氏のチームは来年1月の就任式から走り出す準備が出来ていると言えるでしょう。
そんな中、イーロン・マスク氏の新設される「政府効率化省(DOGE)」トップへの起用は、この先数ヶ月間で様々な影響を及ぼすとみられます。テスラCEOである同氏は、間違いなく官僚制度に切り込み、「沼地の泥水を流す」ために奮闘して劇的な変化を起こすことでしょう。
その点において、2022年にマスク氏がツイッターを買収したことを興味深く思い起こします。当時、同氏が従業員を解雇し、「X」という新たな名の下でツイッターという組織を抜本的に変化させたことに一定程度の反発がありました。
しかし今振り返ってみれば、これにより世界で最も裕福な同氏は自らの見解を大々的に喧伝すると同時に、自らの政策を推し進めるメガホンを手にしており、ツイッターへの当初の介入による混乱の大半が突如としてかなり腑に落ちたように思います。
マスク氏が、この先数ヶ月間でどの程度改革アジェンダを進展させることが出来るかは興味深く見守る必要があるでしょう。確実に言えそうなことは、その過程において、同氏はいくつ卵を割ったとしても気にしないであろうということです。米選挙後の市場の動きを改めて精査すると、2025年の米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測は後退を続け、足元の先物市場では、来年を通して50bps程度の利下げが織り込まれるのみとなっています。成長に追い風となる言動に加え、トランプ政権下での財政や通商、移民政策によるインフレ上振れリスクを踏まえれば、このような市場の反応は概ね理にかなっているとみています。
しかし、米2年債利回りについては4.25%近辺に概ね留まることになるとみています。預金金利が依然としてFRBが示唆する中立金利を大きく上回っていることを踏まえると、この先の金利軌道としては利上げよりもまだ利下げに傾いているとみられるためです。
一方で、過去数日間において、より長期の利回りにそれほどの圧力が掛かっていないことに幾らか驚いています。米2年/30年のイールドカーブについては今後大幅にスティープ化していくとの見方を維持しています。これは市場のコンセンサスといえる見方であり、多くがそれに備えたポジションを取っているとみられますが、トランプ氏圧勝はそのモメンタムに加勢する要因であるとみており、同ポジションを積み増すことも検討しています。
また、為替市場においても、前週のトランプ氏勝利に対する反応がやや遅れている印象を受けていました。選挙直後には、多くの投資家が関税リスクを軽視する方向にあったとみています。これを受けて、米ドルのロング・ポジションを積み増していましたが、先週は米ドルが市場の動きを牽引し、対ユーロでは2022年以来の高値に達するなど大きく上昇しました。
対ユーロでのパリティ(等価)にも近い水準にあり、貿易関連の発言がこの先静まるとは思えない中、米国の関税と力強い経済成長が、現時点では為替市場における支配的なテーマになる可能性があるとみています。実際に先週は、トランプ氏が議会を通す法案に貿易関税を盛り込むことを実際に検討しているとの観測も強まりました。
仮に実行されれば、新政権は関税による歳入をさらなる減税に充てることが可能となるでしょう。また、法案化されれば、2029年以降の政権が関税を容易に覆すことは困難となります。とは言いながらも、トランプ氏の「吠え声」が、実際の関税への「噛みつき」よりも結果として大きかったとしても不思議ではないでしょう。
結局のところ、新政権の早い段階で全体的な関税に動きがある可能性は低いとみており、関税はトランプ氏がディールを交渉するためのツールとして利用され、企業もしくは国家レベルでの言動の変化をもたらすために用いられるであろうとみています。
欧州では、ドイツの総選挙が来年2月23日に実施されることが決定しました。次期連立政権においてはCDU(キリスト教民主同盟)が最大勢力となる可能性が極めて高く、「ドイツのための選択肢」(AfD)は議席数では第2政党となるものの、野党の座に留まるとみています。ドイツが「Schwarze-Null(黒いゼロ)」という財政均衡へのコミットメントを緩めるかどうかは、来年以降のより大幅な財政出動の前兆になるとみて注視しています。
トランプ氏がホワイトハウスに返り咲いたショックと、ロシア・ウクライナ情勢の不確実性による軍事費拡大の必要性が相まって、2025年にはそのようなコミットメントを緩める方向性も考えられます。しかし、CDUのメルツ党首が、選挙前にこの点において大きな変化を示唆する可能性は低いでしょう。CDUは選挙戦において、過去にも「黒いゼロ」への忠誠を打ち出してきた傾向にあり、「私たちはこだわりに誇りを持っています」とのうたい文句にも、CDUの執着が色濃く表われています。
EUでの財政拡大は、欧州イールドカーブのスティープ化につながるとみられ、ドイツの長期債利回りは上昇する可能性があります。ある意味では、そのような方向に向かうとの見方はすでにドイツ国債の足かせとなってきた要因であり、過去数ヶ月間のスワップに対するドイツ国債の大幅なアンダーパフォーマンスの一因でもあったと言えるでしょう。
反対に、ドイツ政府がその財布の紐を緩めないのであれば、より大きな景気減速につながるでしょう。その結果欧州中央銀行(ECB)は、この先数ヶ月間でより積極的な利下げを強いられることとなるかもしれません。短期的には、とりわけユーロが過去数週間で大きく下落していることを踏まえれば、ラガルド氏が50bps利下げを実施する可能性は低いとみています。ただし全般的には、2025年を迎えるにあたり、米国でもユーロ圏でもイールドカーブのスティープ化傾向が予想されると言えるでしょう。
日本では、日銀が12月に利上げを実施するとの見方に確信を強めています。円が米ドルに対して156円を突破して下落し、米国債利回りも上昇する中、利上げを来年1月まで遅らせることによるメリットはほとんどないとみています。
賃金に関する指標も強く、日銀による金融政策正常化の道のりはこの先来年に掛けて続くとみています。日本10年国債利回りは先週1.0%を再び突破しましたが、来年のこの時期には1.50%近辺にあっても不思議ではないとみています。日銀による国債購入減額が、10年債ゾーンの過大評価の解消につながれば、尚更です。
一方で、日本金利が上昇し、ユーロ金利が低下する中、過去30年で最も円安な水準近辺でユーロに対する円のロング・ポジションを構築するには好機であると判断しています。
リスク資産の上昇基調は、米国債利回りの上昇や米ドル高の動きを受けて、先週幾らか落ち着きました。米ドル高は企業収益にとってはマイナスとなる可能性があるほか、生産拠点を海外に設けている米国企業にとっては関税も痛手となるでしょう。社債に関しては、米選挙後のスプレッド縮小局面において、ポジションの削減を続けてきました。
この先数週間では新規発行も増加するとみられ、その観点から言えば、足元で需給面がやや弱含んでいる印象を受けます。より広範に言えば、リスク資産全般の方向感を持ったリスクを削減することを選好しています。この先トランプ氏の下でボラティリティが上昇する局面は多々あり、下落局面でポジションを積み増す好機を提供するであろうとみているためです。
例えば、南アフリカ・ランドなどの通貨については、投資家のポジションがオーバーウェイト気味となっていることもあり、下落に脆弱であるとみています。
一方で、ブラジルのような市場は投資家に選好されず、ポジションもアンダーウェイト気味であることから、需給面主導の市場においては他の市場をアウトパフォームする余地があるとみています。そんな中、中国の経済刺激策は引き続き期待を下回る内容で、ある種ここ最近の中国政府による継続的な政策調整の点滴注射のようなものでした。そのような政策が積もり積もれば、いずれは大きなものとなるでしょう。
しかし現時点では、巨大なバズーカを待たされているような感覚です。中国当局は衝撃と畏怖を受け入れていないように見受けられ、来年初めにも米関税が中国の輸出に打撃を与えると見られる中、中国政府の中には、大幅な景気後退を輸出によって解決できるとの誤解があるのではないかと考えています。貿易相手国は、安価な中国からの輸入品をこれ以上必要としていないにも拘わらず、です。
この先数週間を見据え、政治的なヘッドラインがどの程度金融市場を左右するかどうかを興味深く見守っています。投資家は、米国の選挙が終わった今、来年の見通しをいまだ精査している過程にあるような印象を受けます。
明らかに、リセッション見通しや大幅な成長減速の見方は、少なくとも2025年前半についてはほぼ消失したと言っていいでしょう。その先の、より長期的な見通しは依然として見定めるのが困難であり、遠く先を見据えようとすればするほど、経済予測はもはや当てずっぽうのような世界になってしまうようにも思えます。
今後の景観に関するおおまかな見立てとしては、トランプ氏のアジェンダがもたらすとみられるあらゆる経済的な恩恵に関して、その実現までの過程では数々の障害が予想されると考えています。トランプ氏が指名した政権中枢の人物の中で、果たして誰が一番最初に解任されることになるのか、予想を始めてもいいくらいです。大統領としての自らの見方から少しでも逸脱すれば、その存在に背を向け、うんざりするであろうことは明らかであるためです。実際、正式な就任は数ヶ月先であることを踏まえれば、これまでに発表された候補者の中で、スタートラインにすら立てずにレースから脱落する人物すら現れる可能性があるでしょう。
とは言いながらも、イーロン・マスク氏のような人物が取り込むことの出来る資金やメディアでの発信力を踏まえれば、マスク氏が当面は居座るであろうと予想することは難しくありません。多くの側面から、同世代における最も聡明な人物の一人が、世界の超大国である米国政府の変革と改善の指揮を執るということに、果たして興奮して良いものかどうかは、依然として判断が難しいところです。
しかし、地上に降下する宇宙ロケットを「箸」(と呼ぶ2本の巨大な金属)でキャッチする技術をも支えたマスク氏がこの先もたらすものには、暗い側面もあるでしょう。世界で最もリッチな人物が、世界最大の権力を有するオフィスを取り仕切る人物の横に座れば、その過程で権力が乱用されるリスクは、はっきりとしているかもしれません。マスク氏のツイートが自らにさらなる富をもたらし、政府効率化省ならぬドージ(DOGE)コインを月に届くまで上昇させたとしても、当の本人の関心事ではないかもしれません。しかし、政府を再構築するための突飛な試みがカオスをもたらすようであれば、過去の事例を踏まえると、マスク氏の傲慢さに厳しい裁きが待っているということもあるかもしれません・・・。
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