クレジットストーリーの改善:トルコの回復

Aug 30, 2024

近年、グローバルなマクロ指標や地政学的イベントに注目が集まるなか、新興国市場における前向きな動きの一部は見逃しやすいものとなっています。格付け見通しの改善がトルコのクレジットストーリーの好転をどのように反映しているかをみていきます。

7月後半にはムーディーズが市場を驚かせ、トルコの信用格付けを2段階引き上げてB1とし、見通しはポジティブを維持しました。1ノッチの格上げが予想されていましたが、この2ノッチの動きによって、3つの格付け会社すべてがB1/B+の格付けとなりました。フィッチとS&Pによるさらなる格上げを期待し、その可能性は高いとみています。

この格上げは、2023年5月の議会選挙以降に明らかになったトルコのクレジットストーリーの好転と、私たちがしばらくシグナルを発してきたものを反映したものであると考えています。

それ以来、エルドアン大統領は、インフレ・スパイラルが2桁台後半とトルコ・リラの急落に見舞われていた非伝統的な金融スタンスから、180度転換した著しい政策変更を行ってきました。

エルドアン大統領は、評判の高いメフメト・シムシェキ元副首相を、かつて担当していた財務大臣に再任しました。シムシェキ財相は、中央銀行をはじめとする経済政策運営の場において、信頼できる正統派の考えを持つメンバーをチームとして再雇用することを進めました。チームは早急に財政・金融政策を引き締め、政策金利を8.5%から50%に引き上げました1。エルドアン大統領の低金利政策を持続させてきた蜘蛛の巣のように複雑な金融錬金術は取り払われ、金融ポリシーミックスは簡素化され、伝達(トランスミッション)メカニズムは改善しています。

政策の見直しは、インフレがピークに達した(そして、低下に向かう)ように見える中で、トルコ・リラの安定化と経常赤字は前年比で半分以上減少し、機能し始めています。投資家の信頼感は改善しており、過去1年間のポートフォリオの流入額は約200億米ドルであった一方、脱ドル化も始まっています2。このため、中央銀行は外貨準備高を再構築することが可能となりました。ネットの外貨準備高は一時、極めて厳しい水準となるマイナス600億米ドルまで落ち込みましたが、150億米ドル以上まで回復し、グロスの準備高は現在は過去最高水準に近い1500億米ドルを超える水準まで積み上がってきています3。トルコの5年物CDSは、2023年初めには、エルドアン大統領の非正統的な政策に対する懸念の高まりによって700bpsまで拡大しましたが、足元まで約250bpsとなっており、市場の信頼は回復しています4

実際、EM現地通貨建て債市場において、トルコは2024年の有望な取引のひとつとなっています。なぜなら、中央銀行はインフレが終息するまで政策金利をより高く、より長く維持し、現在の前年同月比75%から、年末までには35~40%、来年末までには10%台に引き下げる、という道筋を市場は評価しています。

しかし、リスクを警戒しておくことは重要です。最大のものは、おそらく、エルドアン大統領が伝統的な金融政策について再考し、正統派の中央銀行総裁であったナジ・アーバル氏を在任6ヶ月足らずの2021年3月に解任したようなことを繰り返す可能性があることでしょう。エルドアン大統領がシムシェキ財相と彼のチームを解任することは、市場にとっては惨事となり、その場合には、トルコがシステミックな危機に直ちに陥る危険性をはらんでいるかもしれません。そうした事態になったときには、エルドアン大統領が再び現在の政策を妨げる可能性が高いと言えるでしょう。

大統領がシムシェキ氏を続投させるという私たちの見解を後押しするのは大統領のアドバイザーたちと私たちとの独自の交流によるものです。チームは変化を遂げ、現在は親ビジネスでマーケットに精通したメンバーで構成されており、大統領の近親者も含まれています。彼らは、大統領に真実を伝え始めており、2023年に方針を変更していなかったならば、システミックな危機はすぐそこに差し迫っていたということを明確にしているようです。

今年3月の地方選挙での与党公正発展党(AKP)の敗北は、トルコの第一の経済問題はインフレであるとの明確なメッセージをエルドアン大統領に認識させることとなりました。エルドアン大統領は、インフレに打ち勝つことが、4年後の再選を勝ち取るための必須条件であることを認識しており、そのためにはシムシェキ氏と同氏のチームを手放さないでいる必要があることをわかっていると考えています。

こうした評価から、トルコのロングを維持すること、特に、トルコ・リラと地方政府債を通じて現地通貨建てでの投資を維持することに高い確信度を持っています。

 

1 Financial Times

2, 3, 4 Bloomberg

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