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ポイント
トランプ氏が勝利する可能性が高いと感じていましたが、予想されていた大統領職と上院だけでなく、わずかな差で下院も共和党が獲得した圧勝ぶりが市場を驚かせました。実質的に議会と行政のすべての側面が共和党の支配下にあるという事実は、ベースケースとしてほとんど予測されていなかったでしょう。下院と上院のねじれが想定されていたなかで、実際の結果は予想よりもはるかに圧倒的であったことを意味します。
選挙結果に影響を与えた2つの重要な投票ブロックは、1)性別を問わないラテン系の投票でした。ラテン系の男性による支持を共和党がより多く集めるという大きな変化が見られました。2)もうひとつは若年層の投票者でした。そして中東の紛争やその他の理由に関連しているかどうかにかかわらず、30歳未満の有権者による民主党への支持はここ最近で最も低い投票数になった、ということでした。これらがハリス氏が予想を大きく下回って敗北した主な理由です。
一般的に、この結果により、政府は政策上、かなり自由な裁量を持つことになり、実施という点で議会からの反対はほとんどないと予想されます。とはいえ、米国はすでに1桁台後半の財政赤字を抱えています。米国景気が減速する場合、トランプ氏がこの赤字を増やす十分な余地があるとは思いません。しかし、明らかに高い水準が維持されるでしょう。よって、来年の赤字水準に対する懸念から、米国債で最も金利上昇が懸念されるのは、長期債であると見ています。
債券の観点からは、政策が明確になるまで、短期デュレーションのエクスポージャーを選好します。市場は、インフレ率の上昇と、経済が減速する中で利下げが難しくなる連邦準備制度理事会(FRB)と、闘わなければならないことに私たちは注目します。
もっとも、短期的な観点からみると、株式市場ではポジティブなセンチメントが続いており、スプレッドもそれに倣って反応しています。減税、規制緩和、そしてM&Aの増加は、全て株式のバリュエーションを支える要因となります。このセンチメントは債券市場にも波及しており、選挙後、国債利回りの上昇によって、トータル・リターンが大きな打撃を受けているものの、スプレッドがタイト化しています。
投資家が徐々により注目するようになると思われる一つの資産は、変動金利資産です。金利が「より高くより長く」の環境では、特に貿易戦争にさらされることになる発行体を回避さえすれば、レバレッジド・ローン分野は、高い利回りをとらえながらも、国債利回りの上昇がトータル・リターンに与える潜在的なマイナスには直面しないという点で、投資家にとっては魅力的に見えるはずです。
私たちは新政権が規制に介入することが少なくなると予想しています。市場の中で最も影響を受ける分野の1つはM&Aでしょう。バイデン政権は多くの取引を阻止してきましたが、これはトランプ政権の規則のもとでは減少することが予想されています。
同時に、例えばエネルギーなどの特定の分野における規制の緩和も予想されます。米国での掘削活動を促進しようとするトランプ政権の強い意欲はありますが、米国のE&P(開発、生産)企業がそれらの提案を引き受けるかどうかは、まだわかりません。彼らは増産には非常に注意を払っており、エネルギー分野全体での収益拡大よりもキャッシュフロー創出に焦点を当てています。しかし、少なくとも認可の観点からは、以前と比べて、条件の緩和が予想されます。
また、ESG関連の規制の範囲が縮小したり撤廃されたりすることや、計画や設備投資の面で柔軟性が増すことも予想されます。それは、成長の観点から、刺激になると考えられます。
これらの変化の一部は、民主党によって広く異議を唱えられると予想していますが、議会を通じてそれを阻止する力は非常に限られるでしょう。
欧州は難しいところにあります。ドイツ国債利回りは米国債につられて上昇するのではなく、当初低下した理由があります。貿易戦争は欧州にマイナスの影響を及ぼし、多くの欧州諸国が対米貿易黒字を抱えていることを考えると、欧州はトランプ氏の政策実施を止めるために多くのことはできないでしょう。経済成長の観点からは、これは欧州にとって足かせになる可能性があります。
同様に、財政的見地からも課題が挙げられます。現在、米国はいくつかのイニシアチブの支援を再検討すると予想しています。例えばロシアとの戦争におけるウクライナにおいて、欧州のパートナー国に防衛費の増額を要請するなどNATO支援についてより取引的なアプローチをとることなどです。
例えば、ドイツのような国では、それが防衛費であろうと、その他であろうと、より多くの支出を認めるような政策の転換があるでしょうか。マリオ・ドラギ氏の最近の論文は、欧州がいかに遅れをとっているのかを強調したので、それによって、異なるトーンとより自己中心的な米国の視点が、財政支出を増やし、欧州内の競争力を高めるためのいくつかのイニシアチブを促進するでしょうか。
これまでは断片的な反応を見てきましたが、その点で、トランプ大統領の到来が欧州を目覚めさせるきっかけになるかどうかは興味深い点です。欧州のリスク資産が共和党のスウィープに慎重に反応していることは適切だと考えており、欧州中央銀行は、米国の政策変更による経済成長へのマイナス影響を一部見込んで、今後の会合で50bpsの利下げを検討する可能性が高いとみています。
次期政権の予算に着目し、それがいかに景気刺激的になるかを注視しています。また、財政赤字の拡大は米国債市場への圧力となる可能性があるため、国債発行計画がどの程度多くなるかについても注視していきます。このことは、最近のスワップスプレッドの動きでも見られるように、市場がより多くの発行を吸収しなければならず、しかしそうする意欲は薄いかもしれないため、特に米国債の長期債利回りが一段と押し上げられる可能性があります。
また、 FRBの視点からは、 2025年にかけて、財政・貿易政策の変化、および米国のインフレ・リスクと潜在的な景気減速の見通しとの双方における変化を、どのように考慮しているかを見ていきます。
上記は、特に複数年でスプレッドが最もタイトな水準に近づいているクレジット市場において、いつまで慎重な姿勢を続け、米国債もしくは社債を通じて、再びリスクをいつ積み増すのかというタイミングへの判断材料となります。
選挙結果は米ドルを下支えするはずであり、結果が出るにつれて上昇が見られました。さらなる上昇の程度は、ポリシーミックス、そしてトランプ氏が公約を実行するかどうかにかかっています。この動きの一部は選挙後24時間に起こったもので、市場は、米ドルがさらにどれだけ上昇する必要があるのかを見極めるには、政策の実行に対するより明確な見通しを必要とするでしょう。
関税が最初に課されることになるのは中国であると見ています。これが米中関係の不安定化を生むと考えています。しかし、トランプ氏は最近、台湾を支持することにそれほど熱心ではなく、民主党よりもはるかに意欲的ではありません。私たちは関税がどのように交渉ツールとして使用されるのかを見ていきます。同様に、台湾への米国の支援がより取引的にもなると考えています。
トランプ氏の経済界や政界のサークルで、対中政策に対してハト派はほとんどいません。その代わり、タカ派は多くいますが、トランプ氏は取引型の外交を追求することが多いと考えています。そのため、今後は、米国がどのようにして手にする様々なレバーを利用するかを見ていきます。
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